4月 9, 2024

ご報告:「ロヒンギャ難民にリサイクル石鹸を届けたい!」クラウドファンディング最終レポート

IMPACT HERO 2022サミ―ル・ラカーニの支援として、2022年4月から5月にかけて実施したクラウドファンディング「43万人の難民にリサイクル石けんを届けたい」では、204名の方々から総額4,314,529円のご寄付をいただきました。これにより、Eco-Soap Bankのカンボジア工場に3台の石けん製造機の導入を実現。また、経済的困難を抱える地元の女性を中心に、新たに15名の従業員を採用することができました。本レポートでは、このクラウドファンディングの支援が、どのような成果をもたらしたのか、その現状と今後について、皆さまにお伝えいたします!

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1.ロヒンギャ難民キャンプでの支援活動とその成果

今回の支援で購入した石けん製造機械により、2022年9月から2023年12月までの1年3ヶ月の間に、バングラデシュ・コックスバーザルの難民キャンプで生活するロヒンギャの人々586,000人に200万個の石けんを提供することができました。

石けんの配布は、現地で難民支援を行う国際NGOを通じて行われ、1回の配布で一世帯あたり6~10個の石けんを含む衛生改善キットが提供されました。難民キャンプには100万人以上が生活していますが、石けんはそのうち半数以上の人々に届いたことになります。

衛生改善キットには、石けんと共に簡易浄水フィルターや歯ブラシ、歯磨き粉なども含まれました。そして石けんの配布とあわせて、正しい手洗いの仕方や予防が必要な病気について伝える衛生教育のワークショップも開催し、女性や子どもたちが参加しました。

 

衛生状況が大幅に改善!

 

現地NGOによる調査によると、石けんの配布後、ロヒンギャ難民キャンプ内の子どもたちの石けんの使用率が38%から100%に向上しました。また、熱や風邪の発病率が44%から18%、胃腸の疾病が8%から0%に低下しました。

▲衛生教育ワークショップの様子

▲配布された衛生改善キット

Eco-Soap Bankと連携し、石けんの配布を行ったカナダのNGO、Global Medricが、バングラデシュ・コックスバザールでロヒンギャの人々に支援物資を提供する様子が、以下の動画でご覧いただけます。

GlobalMedic Continuing to Support Rohingya Refugees

 

 

2.カンボジア工場の成長

今回の支援により、カンボジア工場では3台の石けん製造機を導入すると同時に、15人の新しいスタッフを雇用することができました。これにより、1年間の石けん製造量はこれまでの20倍になり、より多くの支援が必要な人びとに届けることができました。

  

石けんの製造から発送まで

 

カンボジア工場のリサイクル石けんは、①廃棄石けんの粉砕→②圧縮→③成形→④乾燥、という4つの製造工程を経て、発送されます。今回導入した製造機械は、このなかで最も工数がかかっていた「②圧縮」作業を自動化するもので、これによって生産性が大きく向上しました!

▲粉砕した石けんを圧縮する作業

▲粉製造機による圧縮作業

▲成形した石けんの乾燥

▲発送作業

 

カンボジア工場の生産チームも倍増!

新しい機械を導入しましたが、石けんの製造には手作業の工程も必要なため、生産量を増やすためには、人員の増員が不可欠でした。今回、新たに15人のスタッフを採用し、チームを強化しました。このうち13人が女性で、その中にはシングルマザーや他に働き口を見つけるのが難しい女性も含まれています。カンボジア工場で働く従業員の数は33名となり、ほぼ倍増しました!

 

▲両親との別れ、シングルマザーとしての困難、強盗被害のトラウマを乗り越え、夢に向けて石けん工場で働くスレイヒークさん

 

 現在、カンボジア工場で働くスレイヒーク(Sreyheak)さんは、わずか6歳で一家の大黒柱だった父親を亡くし、その後経済的困難で家族全員が働かなければならなくなったため、小学校を卒業することができませんでした。

彼女が18歳になった時、母親はタイに移住し、スレイヒークと彼女の兄弟姉妹はシェムリアップに残されました。より良い生活が始まることを願って、スレイヒークはすぐに結婚しましたが、残念なことに、夫は彼女が妊娠4か月の時に出て行ってしまいました。シングルマザーとしての生活は決して楽ではなく、長年にわたり、子どもを養うために仕事をいくつも掛け持ちしなければなりませんでした。

そんななか2年前のある夜、自宅に見知らぬ男が押し入り、彼女に襲いかかりました。必死で抵抗したことで大事には至りませんでしたが、この強盗傷害未遂事件は彼女の心に大きな傷を残し、トラウマによるストレス症状を克服して仕事に復帰できるようになるまで、長い時間がかかりました。

Eco-Soap Bankでの仕事を得て、毎月安定した収入が入ることで、家族のために果物や野菜を買えるようになったことを誇りに思うと言っています。また少しずつ貯金もして、襲撃された家の修理も計画しています。

 

今とても前向きな気持ちで、達成したい夢や目標もあります。私と娘のために快適な家を作りたいし、小さなビジネスを始めることも考えています」(スレイヒークさん)

 

 

3. Eco-Soap Bank 2023年の成果と今後

カンボジア工場が大きな成長を遂げた結果、2023年度は、6か国の石けん工場を通して1100万個の石けんを22カ国140万人の支援を必要とする人びとに届けることができました!また各国の石けん工場では、経済的困難を抱える女性を中心に総勢160人の従業員たちを安定的に雇用しています!

 

ロヒンギャ難民支援の今後

一方ロヒンギャ難民キャンプの状況は、一層深刻なものになっています。

Eco-Soap Bankが関わったUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の支援プロジェクトは、当初3年間で425,000人に900万個の石けんを届ける計画でしたが、UNHCRの資金難によりプロジェクトが打ち切りとなり、石けんの配布も200万個に留まりました。

国際情勢の影響もあり、ロヒンギャ難民キャンプへの支援は縮小傾向にあり、WFP(世界食糧機構)による一人当たりの食糧支援も予算が33%削減され、金額にしてわずか8ドル分となりました。食糧だけでなく、水や石けんへのアクセスも制限されることで、感染症の広がりも懸念されています。

現在Eco-Soap Bankは、厳しい状況にあるロヒンギャ難民キャンプに引き続き石けんを届けられるよう、UNHCR後に支援プロジェクトを引き継ぐ他の国際機関との提携に向けて準備を進めています。

 

 

4. おわりに ~サミールの挑戦~

世界中で紛争や災害による支援ニーズが高まっている中、未使用の廃棄石けんをリサイクルし、質の高い石けんでありながら業界最安値で提供しているEco-Soap Bankに、国際機関やNGOからの問い合わせが集まっています。

こうした需要に応え、より多くの石けんを製造し必要な人びとに届けられるよう、サミ―ルは各国のEco-Soap Bank工場の生産体制強化と自立運営の実現に取り組んでいます。衛生状態が悪いことで病気になる人びとを一人でも多く救いたい、という強い想いからEco-Soap Bankを立ち上げ、成長させているサミ―ルの挑戦を、どうぞ引き続き応援してください。

 

寄付先:ESBの寄付ページ

https://ecosoapbank.org/donate