10月 20, 2025

【イベントレポ】Re:Earth 2025〜リジェネラティブの種を育む一日〜

10月4日(土)、Earth Companyは東京・赤坂で第2回目となる「Re: Earth 2025〜リジェネラティブの種を育む一日〜」を開催しました。昨年の10周年に続く今回は、モンゴルのトイレ問題に取り組むIMPACT HERO 2023オユナが来日!さらにNTTデータの金田晃一氏、パナソニックの川久保葉月氏をお招きし、リジェネラティブな未来に必要な企業とNPOの共創のあり方を議論しました。会場にはいつも支えてくださるEarth Company Lovers の皆様を始め、企業家やNGO各方面の方達が集結。リジェネラティブの輪がまたひとつ広がった当日の様子をレポートします!

イベント概要

 

  • 日時:2025年10月4日(土)13:00-18:00
  • 会場:赤坂 Warm Heart Cool Head (東京都港区元赤坂1−7−18)

 

イベント内容

 

第一部 13:00~14:30
「Meet a Hero!〜不安な時代を生き抜く強さを学ぶ〜」

  • 内容:2023年インパクトヒーロー・オユナから学ぶこれからの「不安な時代」や「困難な状況」を生き抜く“しなやかさ”や希望の力とは?
  • 登壇者:IMPACT HERO 2023・モンゴル オユンゲレル・ツェデブダンバ(通称オユナ)
    Earth Comany 代表理事 濱川明日香
    Earth Comany インパクトヒーロー支援担当 島田颯

 

第二部 15:00~17:00
「企業とNPOが出会う12の入口〜寄付を超える共創とは?〜」

  • 内容:これから求められるリジェネラティブな未来のために、企業とNPOがそれぞれの力を発揮できる共創のあり方や課題とは?
  • 登壇者:株式会社NTTデータグループ サステナビリティ経営推進本部 シニア・スペシャリスト 金田晃一氏
    パナソニックオペレーショナルエクセレンス株式会社 組織・人材開発センター L&Dソリューション部 川久保葉月氏
    Earth Comany 共同設立者・最高責任者 濱川知宏

 

交流タイム 17:00~17:45

 

1. 「Meet a Hero!~不安な時代を生き抜く強さを学ぶ~」

 

イベントは、代表理事・濱川明日香の挨拶からスタート。

Earth Companyは、これまで19カ国で37のプロジェクトを支援、累計614万人の人々に支援を届けてきました。これまでの活動の歩みに感謝の言葉を述べながら、「2030年までにインパクトヒーローを100人に増やしたい」と意気込みます。

続いてモンゴルから来日したオユナが登場。明日香はオユナを「まるで7回くらい人生を生きているようなスーパーウーマン」と表現します。まさに彼女の人生は困難の連続でした。それらを乗り越えてきた“しなやかな強さ“と“深い愛“の源は何なのでしょうか。

オユナの人生の転機は21歳のとき。

「その年、私は妻になり、母となり、そして4ヶ月の息子を抱えるシングルマザーになった。3つのことを同時に経験したんです」

同年パイロットだった夫を亡くしたオユナ。当時モンゴルは、社会主義から民主化へ移行する激動の時期でした。悲しみのなか、混乱する社会を変えるべく、政治の道を目指します。

 

初めての政治スピーチは、3人から300人?

ヒッチハイクや遊牧民の馬で各地を訪ね、政治演説をしたオユナ。初めてのスピーチに集まったのはわずか3人だったと言います。若く政治のことも分からなかったオユナですが、自身が願う未来のあり方を3時間にわたって語りました。その後、彼らと再会すると、口コミで300人が集まったそうです。演説を重ねるうちに、オユナはビジョンを共有する楽しさに気づきました。

 

政治家としての副業は、ベストセラー作家?

24歳で政治家となったオユナは、政治家としての資金難に直面。そこで始めたのが執筆活動。元々書くことが好きだったオユナは、後にベストセラー小説家にもなります。国会議員・大臣としては、無罪で苦しむ人のために死刑制度の廃止に貢献したり、家庭内暴力を犯罪として扱うことを実現しました。さらにアメリカに不法な形で渡ったモンゴルの化石を取り戻したのだと誇らしげに語ります。

そして50歳から始めたのが、モンゴルのトイレ問題解決に向けた挑戦。

モンゴル首都ウランバートルには、水道も電力供給もない「ゲルエリア」と呼ばれる約170万人の貧困層が生活する地区があります。そこでの不衛生な竪穴式トイレを、安全で環境に優しいトイレに変える活動を始めます。

しかし実際に活動してみると、問題は経済や技術的な面ではなく、文化や意識に根づいていることに気づきます。

「皆さんにも想像してみてほしいんです。ある日水洗トイレが使えなくなって、水で流さないトイレに変わったら、抵抗を感じるのではないでしょうか。モンゴルでも同じです。“水洗トイレがない家=経済的に恵まれない ”という社会的スティグマによって、語ることを避けられてきたトイレを変えることはつまり、意識を変える“教育”としての挑戦になるんです。」

そこで彼女は、NGOや産業といった多くのセクターを巻き込みながら、根本的なモンゴルのトイレ問題の解決に挑んでいます。

Earth Company インパクトヒーロー支援担当の島田颯は、「タブーを打破する原動力とは何なのでしょう?」と尋ねると、オユナは答えました。「タブーというのは、人びとが片方に寄っている状態だと思うんです。」

彼女は多数派によって虐げられた少数派の人びとの傍に立つ大切さを語ります。

「トイレの活動を始めたころ、私は一人でできると信じていました。しかし実際は、多くのセクターや人との協力なしでは根本的解決は実現しないことを知ったんです。自分が正しい、向こうが間違っているという考えを捨てること。相手の立場に立って、みんなにとってプラスになる場所がどこかを考える大切さを学びました」

 

また参加者から「あなたの自信の源は?」という質問が出ると、

「自信というのは、行動した後についてくるものです。例えば、泳ぎ方を学ぶには、まず足を水につけてみなくては始まらない。やってみることが自信を作る第一歩なんです」と微笑みました。

 

さらにオユナは、母親の存在や遊牧民としての価値観にも触れました。

「私の母は常に“やってみなさい”と背中を押し続けてくれる人でした。また壮大な自然のなかで道に迷った時に、頼れるのは自分だけ。私自身が自分を導かなくてはいけないという経験から学んでいます」

人と人を愛と理解でつなぎ、自然とともに生きるオユナの強さ。
会場の誰もが静かに心を動かされました。

 

2.「企業とNPOが出会う12の入口〜寄付を超える共創とは?~」

 

第二部では、Earth Company最高探究責任者として、企業や学校の人財育成を行うインパクトアカデミー研修を統括する濱川知宏が司会を務め、企業とNPOがどのように協働し、リジェネラティブな未来をともに築けるかをテーマに議論が行われました。

 

「企業によるNGO支援」から「NGOによる企業支援」の時代へ

まず登壇したのは、株式会社NTTデータグループ サステナビリティ経営推進本部 シニア・スペシャリスト 金田晃一氏。ビジネスセクターと非営利セクターを転々としながら、40ほどの企業とNGOがつながるプラットフォームづくりに携わってきました。

金田氏が提唱したのが、企業がNGOと連携しながらサステナブル経営を目指す12のステップ。NGOと企業の共創では、お金による関係だけでなく、自社の製品サービスがどれだけ社会に影響を与えているかを評価することも可能です。

「これからの時代は、企業が世の中の動きに常にアンテナを張ることが求められます。その最前線で活動をするNGOとの協働は、これまで以上に重要になってくるでしょう」

企業にとってNGOは、単に支援する存在ではなく、事業のサステナビリティを推進する一歩を創り出してくれる存在なのだと語りました。

続いて、パナソニックオペレーショナルエクセレンス株式会社 組織・人材開発センター L&Dソリューション部 川久保葉月氏が登壇。実際にEarth Companyとの協働で実施した次世代リーダー共創プログラムを紹介しました。

「バリ研修の前と後で、参加者の表情が全く違っていた」

川久保氏は、リアルな社会課題の現場を五感を使って体感し、本質に触れながら多様なリーダー像を学ぶ研修の意義を語りました。国際競争が激化する今、多様な価値観と向き合い、柔軟なリーダーシップが求められる今、自分の言葉で語ることで、人と組織を動かしていけるリーダーの育成が必要とされています。日々のタスクに追われるだけでなく、一人ひとりがありたい姿に向き合い、そこから、企業としてありたい姿を描ける人材に育ってほしい」と。

続いて知宏が、Earth Companyの事業を金田氏の12のステップに当てはめ、今後の企業との協働の可能性を語ります。「リジェネラティブ」という新しい世界観として、Earth Companyは毎日新聞や企業に注目されるようになりました。しかし知宏は、さらに一般の方にもリジェネラティブの未来を発信していくことが求められると述べました。

 

ディスカッションでは、越境体験を通じて本質に触れた社員と、そうではない社員の温度差をどう埋めるかが議題に。

実際に課題の現場に赴き、研修参加者が企業とNGOとの共創の可能性を実感しても、その後の変革が企業全体に広まらなければ、持続的な変化に繋がりません。また社員たちのありたい姿に応えられるような、企業の体制や経営も問われてきます。セッションを通じて、「越境後の対応をマニュアル化したり、アフターケアすることも必要」」という課題が見えました

Q&Aでは参加者から「これからの企業に求められることは何か」という質問が投げられました。

金田氏は「多様性」であると述べ、一人ひとりが自身のありたい姿を実現する多様性、そして企業とNGOといった異なるセクターの両方の視点に立ち、通訳・橋渡しすることが求められると述べました。

これはまさに、第一部でオユナが、トイレ問題の根本解決には多様なセクターとの協働と、相手の立場に立って両者のメリットを探すことが不可欠だと語ったことと一致していました。多様な視点を持ち考える力が、人と社会と自然が共繁栄するリジェネラティブな未来に繋がるのです。

 

3. 交流タイム〜笑顔と乾杯で明日に向けて〜

 

イベント最後は、知宏が出場し優勝した、ICCサミット KYOTO 2025「ソーシャルグッド・カタパルト」の賞品「獺祭」を手に、参加者全員で乾杯しました!

乾杯の音頭を取ったオユナは、健康と幸せのための二つの言葉を贈ってくれました。

「Forgive(許すこと)そしてForget(忘れること)。
私たちは今日の悔いや失敗を明日に残してはなりません。
明日挑戦するためのエネルギーは、明日のためにあるのだから」

想いをともにする参加者の皆さんとの出会いや再会を喜びながら、終始温かい雰囲気でイベントは終了。
参加者や登壇者、オユナやスタッフ一同が気さくに交流し、リジェネラティブなつながりを実感できる一日となりました。

 

Earth Companyはリジェネラティブなあり方を目指し、これからも加速していきますともに未来を創りたいと感じてくださった方は、ぜひEarth Loversとしてインパクトヒーローを支援したり、研修に参加することから一歩踏み出してみませんか?

インパクトヒーローを支援する

インパクトアカデミー研修について

 

後援:国際協力NGOセンター(JANIC)
文章:Yuina Hirose
写真撮影:Yoshito Sugahara