10月 15, 2024

【イベントレポ】Re: Earth~地球まるごと共繁栄へ!枠にはまらないワクワクな未来目指して

2024年10月6日、Earth Company 10周年イベントが東京で行われました。当日はインパクトヒーロー2名も来日し、日頃からEarth Companyを応援し支えてくださっている皆様、リジェネラティブに関心を寄せる学生から経営者まで、各方面の方々にご来場いただき、大盛況のうちに幕を閉じることができました!ここでは当日の熱気に溢れた様子をお伝えします。

イベント概要

 

日時:2024年10月6日(日)15:30-19:30

会場:日本科学未来館 7階(東京都江東区青海2-3-6)

 

 

イベント内容

 

 ■第一部 15:30〜17:40

1.オープニングセッション

内容:Earth Companyの10年間の歩みと、これから目指す「リジェネラティブ」な未来

登壇者:Earth Company 共同創設者 濱川明日香・知宏

2.ヒーローズトーク

内容:並外れた変革力で、アジア太平洋地域の社会課題解決に取り組むチェンジメーカー「インパクトヒーロー」の取り組み

登壇者:Eco-Soap Bank代表・Impact Hero 2022 サミール・ラカーニ(カンボジア /公衆衛生・女性のエンパワメント)、

UWS Nepal代表・Impact Hero 2024 スリヤ・カルキ(ネパール/教育格差の解消)

3.リジェネラティブ・ビジネス

内容:多くの企業が本業を通じてサステナビリティに取り組むことが難しいという中で、阻害する要因や必要な変革とは何か

登壇者:株式会社LIFULL 代表取締役会長 井上高志氏、楽天グループ株式会社 常務執行役員・CWO 小林正忠氏、サントリーホールディングス株式会社 人財戦略本部 部長 長政友美氏

4.クロージングセッション

内容:ウェルビーイングに対する世界の関心やトレンド、「地球丸ごと共繁栄」を実現するために必要なウェルビーイングについて

登壇者:予防医学研究者・公益財団法人 Well-being for Planet Earth 代表理事 石川善樹氏

 

■第二部 18:00〜19:30

Mana Kitchen in Tokyo

内容:東南アジア初の「B Corp」認証ホテルであるバリ島ウブドのエシカルホテル「Mana Earthly Paradise」の命を育むレストランのメニュー監修をした比嘉康洋シェフによる、日本のスーパーフードを使ったインドネシア料理を提供。

 

1.オープニング:Earth Companyが目指す「地球まるごと共繁栄」(濱川明日香/濱川知宏)

 

イベントは、来場者の温かい拍手に迎えられ、代表の濱川明日香(以下、明日香)と濱川知宏(以下、知宏)の挨拶からスタート。はじめに、アジア太平洋のチェンジメーカー支援事業、企業や学校への研修事業、今年9月に5周年を迎えたバリ島のエシカルホテル事業など、これまでのEarth Companyの歩みを紹介しました。

 

そして明日香は、ますます拡がる現代の社会課題・環境課題について言及したうえで、

Earth Companyが目指すリジェネレーションとは、「ディジェネレーション・悪循環が起こらない状態」であるとし、「昨今世界中で同時多発的に行っている災害や、ストレスフルな人間が作り出す社会、そしてその社会が生み出す地球への負荷、これら全てが悪循環として繋がっている。そんな状態を打破し、地球全体でウェルビーイングが向上できるリジェネラティブな好循環を作り出すことが、Earth Companyが目指す世界である」と述べました。

 

最後に知宏は、Earth Companyは「枠にはまらない、ワクワクにはまる」団体だと表現し、会場を沸かせました。そして、これからも枠にとらわれず各事業を加速・進化させていくことを宣言し、唯一無二の「Earth Company Way」として、「新たなパラダイムへいざなう世界観の提供、本質を大事にし、純度高く本当に良いものを追求・探究していく。そして皆さんと一緒に笑顔あふれる素晴らしいパラダイムを作っていきたい」とオープニングを熱く締めくくりました。

2.ヒーローズトーク

 

■Eco-Soap Bank代表・Impact Hero 2022 サミール・ラカーニ(カンボジア /公衆衛生・女性のエンパワメント)

 

大学時代カンボジアで、石けんが高くて買えないという理由で衣類用洗剤で赤ちゃんを洗っていた母親を目にし、Eco-Soap Bankを設立したサミール。2015年の設立から、廃棄石けんのリサイクル通して途上国で女性の雇用を生み出し、難民や貧困層の人々の衛生習慣と健康改善のため、これまで6500万個の石けんを届けてきました。

 

そんなサミールの活動はたくさんの共感者を得て、2024年9月にEarth Companyが実施したクラウドファンディングでは目標金額を超える1017万円の寄付が集まりました。サミールはご来場された支援者の方々に、この場を借りて、心からの感謝の気持ちを伝えました。

 

サミールが語る「リジェネラティブ」な未来には、「外側」と「内側」のふたつがあると述べました。外側とは「私たちはどのような世界に住みたいのか」ということ、内側とは「どのような世界のために生きたいのか」ということ。そしてサミールが目指すのは、今よりも良い状態を世界に残すこと。そして、彼の活動・ジャーニーを通して、人間もまた再生(regenerate)できるのだということを教えてくれました。最後は、会場の皆さんへのこのような問いかけで締めくくりました。

 

「あなたにとって、リジェネラティブな未来とは、どんな未来ですか?」

 

■UWS Nepal代表・Impact Hero 2024 スリヤ・カルキ(ネパール/教育格差の解消)

 

ネパールの教育改革のためにUWS Nepalを設立したスリヤ。農村地域の貧困層のシングルマザーの元で育ち、5歳から動物の世話などをして働いていました。しかし「教育の力」を信じていた母親に連れられ、首都の全寮制の学校に奨学金を得て進学。そこからベネズエラのUWC高校で学ぶ機会を得て、海外の大学に進学し、修士号をも取得。教育のおかげで一変した自身の話を「おとぎ話」だと語りました。

現在の彼のミッションは、学校を作り、自分と同じ境遇のネパールの子どもたちに教育を届けること。そして、教育の力で、子どもたちが貧困ではなく、繁栄の未来を夢見ることができるようになることです。

スリヤが来日する直前、ネパールでは大規模洪水が発生し甚大な被害発生。彼の学校2校も被災しました。スリヤは、今まさに起きていて、そしてこれからも続く気候変動を目の当たりにし、「気候変動の影響を最も受けるのは、その原因を生み出していない、最も脆弱な立場にある人々です。彼らには、気候変動が何なのか、そしてそれが人生に与える影響を知る権利があり、準備する必要があります。まさに教育こそが、それを可能するもので、手遅れになる前に今行動を起こさなければなりません」と語りました。

3.リジェネラティブ・ビジネス:「地球まるごと共繁栄」を実現するために今企業に必要な変革とは

 

本セッションでは、知宏がモデレーターとなり、豪華パネリストたちに以下のような質問をしながら、ビジネスでリジェネラティブな未来をいかに実現するかについて議論を深めました。

 

「経営者としてESGやSDGsを推進する上での課題は?」

「社会課題寄りの人材育成やこだわりのある人材育成は?」

「越境体験など強い刺激を受けると、辞める社員も多くのなるのでは?企業目線で見るとよくないことだが、社会に羽ばたいていくのは良いこと。社会全体としての目線で捉えるべきか?」

 

パネリストのコメント

 

「経営者が自社の利益だけを追求する時代は終わった。経営層が直接お金にならないこともやるという包括的な考えにならないと企業は永続しない

「採用時に、3年後、5年後起業したいというのはウェルカム。一番重要なことは、人生をかけて何をやりたいのか、強烈な意思があること。会社で実現する人もいれば、外で実現する人もいるが、社会全体が良くなればいいと思っている」

「マズローの欲求5段階説の上には、自己超越という、共生欲求がある。組織が目指しているものはまさにこれであり、ビジョンを共有し自分たちで何とか実現しようという状態に持っていくのがベスト。チームでやり遂げたときにものすごい充足感が得られる」

- 株式会社LIFULL 代表取締役会長 井上高志氏

 

ウェルビーイング=自分らしく生きる、と定義している。生活スタイルが多様化するこの時代、目指すものを仲間全員できちんと共有できているかが重要。そのため、自社ではミッション・ビジョン・バリューの共有を主な目的とした部署を組織化している」

「今後世の中を変えていく若い力が不可欠なので、新卒をたくさん採用している。一方ハードな目標も課しているし、異動もある。結果、退職して地域創生や社会課題解決に向け起業家になる仲間もいる一方、再入社してくれる仲間もいる。中長期的な視野で考えればオールジャパン、ないしはオール地球人として同じ方向を目指しており、タイトル通り(地球まるごと共繁栄)になるのではないか」

-楽天グループ株式会社 常務執行役員・CWO 小林正忠氏

 

事業で得た利益を社会にも還元する企業理念は、創立当初から受け継がれる考え。サントリーや国内にとどまらず、グローバル規模に視座で様々な社会課題を学び体験する機会を通じて、一人ひとりが自分事化してほしい」

「サントリーのバリューについて、より広い視野でとらえて深く理解するために、入社2年目で同期全員がバリ研修へ行き経験を共にすることは大きな意義がある。キャリアの早い段階で自分のこれからの人生を考え、社会課題やウェルビーイング、地球規模のことを日常の仕事から離れて経験し考え抜く10日間が原体験になれば。(社会にインパクトをもたらすのは時間がかかるため)長期目線の人財育成の視点は昔からあり、長い目でみて花開くという視点を持っている。」

- サントリーホールディングス株式会社 人財戦略本部 部長 長政友美氏

4.クロージングセッション:「地球まるごと共繁栄」を生み出す一人ひとりのウェルビーイング

 

■予防医学研究者・公益財団法人 Well-being for Planet Earth 代表理事 石川善樹氏

 

昨今リジェネレーションというキーワードとともに、国際的な潮流となってきているウェルビーイングについて、SDGsが発展してきたこれまでの背景、そしてこの先の未来についてお話いただきました。

 

「ウェルビーイングの波が大きく来たのは2011年。きかっけは1970年代ブータンで始まった、GDPよりハピネスやウェルビーイングを国づくりの基軸にしていくという試み。国際的にも共感を呼び、ウェルビーイングの重要性は広まってきたが、2015年のSDGs採択時にはウェルビーイングの内容を入れ込むことが実現しなかった。大阪・関西万博のコンセプトでもあるBeyond SDGsでは、国際社会としてウェルビーイングという考えを入れようと、今議論が進んでいる。

 

経済学者のシュンペーターが未来に向かう二つの方法として提唱したのが成長と発展。20世紀は経済成長という素晴らしい成長を遂げたが、一方で環境破壊など負の側面を生み出した。そこで生み出されたのが持続的発展(Sustainable Development)。30年弱の議論を経て、具体的な指標に落とし込まれたのがSDGs。基本コンセプトは負の遺産を残さないことであり、マイナスを減らす指標にとどまる。

 

この流れを受け、正の遺産を残すことの代名詞としてウェルビーイングが注目されている人間のみならず、社会や地球の持続的ウェルビーイングを目指すためのSWGs(Sustainable Well-being Goals)の議論が始まっている

 

一方で、ウェルビーイングはまだ解像度が荒く、SWGsの具体的指標はこれからますます議論が必要。リジェネラティブが、人間や社会や地球に良い影響を与えるポジティブなループを作っていくものだとすると、それを象徴する指標が何なのか、具体を議論し皆のコンセンサスにしていくフェーズに入ってくる。リジェネラティブとSWGsが融合していく。そんな未来が起こると素晴らしい

第二部:Mana Kitchen in Tokyo

 

バリ島のエシカルホテルMana Earthly Paradiseで、体にも地球にも良いをコンセプトにオーガニックや地産地消をベースにしたメニューを監修した、比嘉康洋シェフがこの日のために特別に再現。麹やスパイスをふんだんに使い、愛情ホルモン「オキシトシン」をテーマにした料理をご堪能いただきました。

 

参加者、登壇者、インパクトヒーロー、スタッフ、志を同じにした者同士全員が、思い思いに交流を深め笑顔あふれる時間となりました。会場はこれ以上ないほどの熱気とポジティブエネルギーに包まれ、まさに会場一体がまるごと共繁栄を体現。これから目指す「Re: Earth~地球まるごと共繁栄」の第一歩を仲間たちみんなで踏み出した、そんな一日となりました。

 

Earth Companyを支えてくださった皆さまのおかげで、次の10年に繋がる素晴らしいイベントを実現することができました。これからもリジェネラティブな世界を目指し、より多くの仲間たちと一緒に歩んでいきましょう!今後とも、Earth Companyをよろしくお願いいたします。

 

文章:Kanami Sase

写真撮影:Yoshito Sugahara