6月 25, 2025

【現地レポート】ネパールの現場が教えてくれた、信頼から広がる支援のあり方

2025年5月、Earth Companyのインパクトヒーロー支援チームは、Impact Hero 2024 スリヤ・カルキの活動現場の視察のため、ネパールを訪問しました。 目的は、スリヤが展開するUWSネパールの学校支援プログラムの現場を自分たちの目で確かめ、その活動が地域にどのような変化をもたらしているのかを肌で感じること。そして、そこからEarth Companyとしての今後の支援の方向性を見出すことでした。

 

Impact Hero 2024 スリヤ・カルキの活動概要

 

スリヤ・カルキ
UWS Nepal代表・Impact Hero 2024(ネパール/教育格差)

就学児童の4人に1人が8年間の基礎教育を終えられないネパール。最寄りの学校まで徒歩2時間半もかかる村で、シングルマザーのもと生まれ育ったスリヤは、国の奨学金を得て首都や海外で教育機会を得た後、農村部の教育改革に取り組むため2015年にUWSネパールを創設。農村部を中心に82校の小・中学校を設立し、14,000人以上の子どもたちに教育を届けてきた。退学率を下げるためのプログラムで、提携学校での基礎課程修了率は98%に上る。政府との連携でネパール全土の学校にプログラムを広げ、国内の教育格差解消に取り組む。

過酷な道のりが物語る、山岳地の現実

 

バリと日本からネパールの首都カトマンズ入りした私たちは、到着翌朝に飛行機で東部サンクワサバに向かいました。30分ちょっとのフライトですが、窓からは同じ目線に「世界の屋根」ヒマラヤ山脈、遠くにはエベレストが見えたことに大感動!また眼下に広がる、急峻な土地に家々が点在する光景からも、国土の約8割が丘陵・山岳地帯であることを実感しました。

到着後、陸路で標高2000mほどの山岳地にあるカンプール村を目指しました。最初1時間ほどの舗装道路から、四駆の車内でもまっすぐ座っていられないほどの険しい山道に。石や泥、急カーブの連続を3時間ほどかけてようやく辿り着いたのが、スリヤの故郷に建てられたUWSネパールの学校でした。

<未舗装道路の移動は過酷>

 

村人たちの歓迎に見る、誇りと喜び

 

霧と小雨のなか車から降りた私たちを迎えてくれたのは、村中総出の温かい歓迎。カラフルな民族衣装に身を包んだ女性たちにティカ(歓迎のためにおでこにつける赤い粉)と花飾りをもらい、伝統楽器の音に導かれて山肌に建つ学校へ向かいました。

校庭ではさらに多くの子どもたちや教員、村人たちが待ち受け、おそらく準備に時間も労力もかかったであろうセレモニーが始まりました。集まった人々からは、UWSの支援を地域が引き継ぎ、今では自分たちの力で学校を運営しているという誇りが伝わってきました。

スリヤにとっては10年ぶりの帰郷。自らが育ち、支援を届けたこの地に、敢えて距離を置いてきた彼にとって、地域の人々が感謝とともに学校を運営している姿は大きな喜びだったようです。

夜は村の家庭にホームステイし、翌日はスリヤが8歳まで住んでいた生家と、当時2時間半かけて通っていた通学路を辿りました。訪問者である私たちにとっては雄大な自然の中の“トレッキング”でしたが、小さな子どもがどんな天候でも毎日この道を通っていたという現実の過酷さを思うと、胸が締めつけられました。

<村人たちの先導で生徒たちの待つ学校へ>

<歓迎セレモニーでスピーチするスリヤと温かく迎える村人たち>

<スリヤの通学路を辿る>

 

ただ学校を建てるのではない。仕組みを根づかせるという挑戦

 

滞在中に訪れた3つのUWSスクール(UWSネパールが建設と運営支援をし、その後公立学校として委譲する学校)は、いずれも山奥にありアクセスの厳しさが共通しています。最後に訪れた学校は、チベット国境近く、町から山を3つ越える片道6時間半の非常に険しい道のりでした。

「学校を建てようと言って来た人は何人もいたけれど、本当に約束を守ったのはスリヤだけだった」村の長老の言葉が心に残りました。

UWSネパールの支援は、単なる建設支援にとどまりません。完成後も5年間は運営に伴走し、その後さらに3年かけて地域や行政に引き継ぎます。支援に入る前から「この学校はあなたたちのもの」と伝え、お互いのコミットメントを確認し続ける強い意志があるのです。

運営支援にあたっては、学校を巡回し、課題に対応するUWSネパールの「スクール・モービライザー」の存在も重要です。そして、母親たちの積極的な関わりも印象的でした。UWSネパールは母親グループの組織化と活動支援を行っており、教育に対する彼女たちの誇りと責任感が、地域の大きな力になっています。

<最へき地のUWSウリン校>

<自信を持ってスピーチをする母親グループメンバー>

 

なぜこの仕組みは機能しているのか?スリヤの「あり方」

 

海外で高等教育を受け、20代前半で「一人でも多くの子どもに早く教育を届けたい」というビジョンの下UWSネパールを立ち上げたスリヤは、当初スピード重視で課題解決を推進しようとしていました。しかし、現地の文化や意思決定のプロセスに直面し、信頼関係を築くには時間が必要であることを学びます。

「共に進むこと」の重要性に気づいた彼は、リーダーとしての在り方を大きく変えていきました。今では「耳を傾けるリーダー」として、地域の声を尊重しながら方向性を共につくっています。

その変化を支えてきた人としてご紹介したいのが、地元サワンバラヤ出身のケムさん。若きスリヤのビジョンに共感し、地域と彼との信頼の架け橋となって10年以上スリヤとUWSネパールをサポートしてきた存在です。地域の言葉で語り、価値観を共有し、時間をかけて前進する。UWSの成功の鍵は、こうした“地に足のついた支援”にあると感じました。

<UWSネパールのチームメンバーと。スリヤの後ろがケムさん>

 

「700校、10万人の子どもたちに教育を」

 

スリヤが掲げるビジョンは、2030年までに700の学校を通じて10万人の子どもに質の高い教育を届けること。

壮大すぎる?
いいえ、現地で見た私たちは確信しています。これは夢ではなく、すでに始まっている未来です。

スリヤはさらに多くの行政や地域を巻き込み、確実な変化を起こし始めています。

<UWSスクールで学ぶ子どもたち>

 

この旅が教えてくれたこと

 

ネパールの山奥で、実際に現場を歩き、地域の人々と語り、子どもたちの笑顔に触れた日々は、Earth Companyチームにとって支援の本質を見つめ直す貴重な時間でした。

そして何より、スリヤという人と旅を共にしたことも貴重な経験でした。彼がどんな場面で立ち止まり、どんな言葉を選び、何を信じて動いているのか。その姿から、私たちはスリヤについての理解と信頼を深めたのです。

「変えること」より「共に変わること」。

スリヤの2030ビジョンの達成のために、Earth Companyは日本並びにアジアでの資金調達のサポートを行う予定です。

この挑戦を共に進めるスリヤとEarth Companyの歩みに、どうぞご期待いただき、引き続き応援をよろしくお願いします。

<スリヤx ECメンバー>

訪問スタッフ:濱川明日香(代表理事)、佐藤真美(日本事務局長)、島田颯(インパクトヒーロー支援マネージャー)、ディアンドレ・サロインソン(バリ事務局長)

 

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