【レポート】「ミャンマーからのSOS」軍のクーデターから発信を続ける日本人

弾圧によって死傷者が出る事態にまで発展してしまったこのクーデター。その発生から、ミャンマーで現地の様子やミャンマーの発信を続けている日本人・Nさんがいます。その発信の中で、最も注目されたのが「ビジュアルでわかる!ミャンマー軍事クーデター」。イラストの権利をオープンにしたことで、Facebookだけでも1600近くシェアされました。

ヤンゴンもインターネットが遮断されるだけでなく、停電になるような不安定な状況で、ミャンマー国軍の弾圧により、Nさんも身の危険が日ごとに増している状況です。それでも、日本の皆さんにミャンマーの状況を知ってほしい!という思いで、3月20日(土)Earth Companyの支援者限定のインタビュー動画配信(収録)にご出演いただけることになりました。

どれだけミャンマーの人々が自由を渇望しているか。
私たち国際社会が、今、何をすべきなのか。

このイラストのみならず、Nさんの発信する言葉には、まるで直接語りかけられているような、臨場感と体温が感じられます。ここではインタビュー動画配信に先駆けて、そのほんの一部をNさんのそのままの言葉での引用として、紹介させていただきます。

ミャンマー人が今、必死に闘っている「国軍」とは?

※クーデターの背景やミャンマーの現代史を、わかりやすくイラストで解説してくれた図がこちらです。

注)以下、Nさんにご了承いただき、Nさんの発信するレポートを原文のまま掲載させていただきます。

クーデター初日のヤンゴン市内

町は普通にバスも走ってますし、市場もやっています。現時点では心配無用です。ただ、道路が封鎖されている地域も出ているとのことで、今後軍政権から発表される情報によって、どんどん変わってくるでしょう。

問題は、朝から電話が使えず、あと1時間ほどでインターネットも使えなくなること。

 

非暴力・不服従の抵抗

 

昨夜(2月2日)、ミャンマー人の友人や同僚と、電話でクーデタについて話しました。話してみて初めて、彼らの怒りの深さを知りました。

今ミャンマーの市民は国軍に対してめちゃくちゃ怒っています。が、それを表す手段がありません。

デモもできない現状で、彼らにできるのは、非暴力・不服従の抵抗。

これは民主化の象徴であるアウンサンスーチー氏の政治姿勢そのもので、見ていて切なくなります。彼らが期待しているのは、多くの人がミャンマーの現状に関心をもってくれること、そして外国から圧力をかけてもらうこと。

軍政に手も足も出ない今、それが彼らの希望になっています。

 

簡単に奪われる自由

 

2月5日、朝から「Faceobookが遮断された」というメッセージ。

一気に目がさめる。ミャンマー人の大事なものが、また一方的に奪われた。国軍の思惑1つで、いとも簡単にすべてが変わる。

ひとつずつ、自由が閉ざされていく。それに立ち向かうすべもない。

それがこんなにも悔しいことだったなんて・・・。

起床後、スマホの通知をみることに、小さな覚悟が必要になってきた。今日はどんな悪いニュースが届いているんだろう?

デモが始まる

クーデターが起きてから最初の週末。まず間違いなく何かが起きると誰もが思い、緊張していた。

土曜日、午前10時頃。色んなコミュニティから情報が入り始めた。ヤンゴン郊外でデモが始まった、警察に連行された人がいる、など。

いよいよ始まったか。どうか、血が流れませんように・・・!

祈るような気持ちで、さらなる情報を検索しようとしていたときインターネットがまったくつながらなくなった。国軍が、市民のあいだでデモの情報が拡散され、運動が拡大するのを阻止しようとしているのだろう。

 

弾圧宣言。世界へのメッセージ

 

ミャンマー国軍が、アナウンスを出した。クーデターに抗議する市民に対して「国家の安定と治安を混乱させる行為を防ぐためには法的措置をとる」と。

週末にインターネットを遮断された時、スタッフは電話でこう言っていた。

「今ミャンマーで起きていることを、世界はちゃんと見てくれているのかな」

ミャンマー人は、もうすぐ完全に手足を縛られてしまう。どうか忘れずに、見ていてほしい。日本政府に、ミャンマー国軍を政府として認めるなと、訴えてほしい。同時に、日本政府に嘆願しつづける在日ミャンマー人を、サポートしてほしい。

在日ミャンマー人が、コロナ禍に非常識だと批判され、申し訳ないと謝りながら、それでも集まって声を上げる理由に、どうか思いを馳せてほしい。

ついに命が失われた

写真引用:South China Morning Post “Two killed in Myanmar anti-coup protest shooting

 

2月9日、首都ネピトーでは、警察官が発砲し、頭部を撃たれた19歳の女性が亡くなった。直後からSNS上には、写真や動画が次々とUPされ、拡散された。

流出するレントゲン写真。血のついたヘルメット。

メディア各社は、どこよりも早く情報をつかもうと躍起になる。実弾か、ゴム弾か。死亡か、重症か。正直言って、どっちであろうとどうでもいいという気がした。

無抵抗の民衆に、軍が発砲した。それだけでもう十分すぎるほど、重い。楽しげな若者の風景も、銃声と流血も、拡散される憎悪も、ミャンマーで、同じ瞬間に、同じ対立構造の中で起きている。 

インターネットの画面越しでは、一体何が本当なのかわからない。現実をつかみそこねて戸惑う。15日からは、サイバーセキュリティ法なるものが施行される。これによって、軍がすべてのインターネット上の情報を、合法的に監視し、管理できるようになる。

 

繰り返される軍の残虐行為

 

2月12日に「恩赦」という名目で街に放たれた2万人を超す囚人たちは、各地で放火や家宅侵入などを起こしているらしい。

住民らに取り押さえられた囚人が、虚ろな目で何かを話す動画。薬を盛られているのだという。同じように、貯水タンクに毒を入れようとした少年もいたとのこと。いやいや、それはさすがにないでしょ、と言いたくなるような話だが、実は全く同じことが、今までの軍事政権時代にも繰り返されてきた。

大規模な抗議運動は、2週間目に突入した。理由なし・令状なしの逮捕を合法化(ありえない!)した軍に対しひとりひとりが、命がけで声をあげている。軍政は絶対に、絶対に、受け入れない。スーチー氏が繰り返した言葉「Freedom from Fear」の本当の意味を思い知る。

 

綱渡りの抗議。非暴力への信念の裏に

 

今週になって、街には装甲車が増えた。警察ではなく、軍が出てきている。300mほど先にある中央銀行前でも、住民が戦車と対峙する。LIVE配信される、見慣れた景色。行きつけのコンビニ。

集まった市民は、声を合わせて不服従を叫ぶ。歌を歌う。
反軍政のポスターを持って戦車の前に立ち、写真を撮る。
戦車にこっそり Democracy のステッカーを貼る。

ときどき戦車から兵士が出てきて、ステッカーを剥がす。なんて平和で、優しい抗議なんだろう。でもこの穏やかさは、実はギリギリのバランスの上にある。市民が、少し調子にのって挑発しすぎれば、そして兵士がカッとなってボタンを押せば、市民は簡単に殺される。

『僕たちは、絶対に暴力を使わない』

カレン族の友達からこの言葉を初めて聞いたのは、クーデター2日目の夜だった。

「僕らが少しでも暴力を使ったら、軍は『国の治安を守る』と言って、弾圧にかかる。そうやって僕らは、何度も弾圧されて、殺されて、負けてきたんだ」

道路を封鎖。世界を驚かせた抗議活動

写真引用:BBC News “Myanmar coup: Mass protests defy military and gridlock Yangon

 

2月18日、抵抗運動が、ものすごい規模になって息を吹き返している。郊外に住む友人から次々と「民衆が道路を封鎖している」と連絡が入る。幹線道路を塞げば、人々は仕事に行けなくなる。国の経済は止まる。軍政を困らせるための、CDM(不服従、仕事ボイコット)活動の一環だ。

道路は街を流れる血管だ。その動きを止める実力行使は、軍の介入を招く。いよいよ軍が、市民を強制排除しはじめる。

パソコンの前で、頭をかかえた。
・・・しかし、ヤンゴン市民は一枚上手だった。

おもむろに車を止めると、ボンネットを開け「あれ?車が壊れた」と言い始めたのだ。運転手はわざわざ「おかしいな」とか言いながらボンネットをあける。首を傾げる。困ったなぁ、車が動かないなぁ。

それを見た、サイカー(自転車タクシー)のおじさんたちが笑顔で拍手を送る。夕方になると、あれ、ふしぎだな、車が直ったぞ、ということでみんな平和に家に帰った。

心が痛くなるほどの民主化への渇望と、ユーモラスな表現方法。うまくやったな、と笑い出したくなる。ミャンマー市民は、まだまだ負けない。

 

22222運動

写真引用:The New York Times “Paint, Poems and Protest Anthems: Myanmar’s Coup Inspires the Art of Defiance

 

2月22日(月)、ゾロ目の日。

ミャンマーの民主化運動の歴史における、象徴的な8888運動(1988年8月8日に行われたデモ。凄まじい弾圧を受けた)にちなんで、全国で最大規模のデモが行われた。工場やショッピングモールはもちろん、地元の市場や、小さな露店にいたるまで、ほとんどすべての店が休業した。

そして大勢のミャンマー市民が、怒濤のように町に出た。前日の銃殺にもひるまず、人々は軍政への拒絶を主張する。白い服が多いのは、撃たれた時に血の色がわかるためだという。

たとえ撃たれても、その血の色が世界に報道されれば軍政にダメージを与えられるかもしれない。死んでもあきらめない覚悟。

自由や人権とは、命とひきかえにしてでも守るべきものなのだとミャンマー人の行動を見て、思い知る。

 

不服従を受け継ぐ若者たち

 

たくさんの罪のない市民が、殺された。翌日には、遺された人たちの姿がSNSで拡散された。

息子をなぜデモに行かせてしまったのかと、狂ったように泣き叫ぶ母親。
父親の遺影を片手に、わけもわからず泣きじゃくる小さな息子。

「○人が死亡」というセンセーショナルな数字は、もはや意味をなさない。それでも、3月1日も、2日も。窓の外からはデモの声が聞こえてくる。28日に比べたら規模は小さいが、それでもかなりの人数だ。

人々の悲しみや怒りが、絶対に軍政を受け入れないという力に変わっているように感じる。なんて勇敢な人たちだろう・・・。

この勇敢さを支えるのは、スーチーさんが貫いてきた信念だと思う。スーチーさんは、NLD党を設立した当初(1988年)から「国民が同意しないすべての命令と権力に、義務として反抗しよう」と、まさに不服従をスローガンに掲げてきた。

また、真の自由とは「心の中の恐怖からの自由」だとして恐怖によって「自国の囚人」にならないように、と一貫して語り続けた。今、命がけでデモに参加している若者たちは、民主化以降、ようやく解禁されたスーチーさんの本を読み、その言葉を聞いて育ってきた、最初の世代なのだ。

 

 

初めて、鍋を叩くのが嫌になった

 

こんなにみんなが毎晩力いっぱい鍋を叩いて、大声で歌って絶対に軍政は受け入れないんだ、何が何でも民主主義なんだ、と叫んでも暴力はどうにもならないじゃないか!やられっぱなしじゃないか!

そんなのわかっていたけど、本当にもう、嫌だ・・・。
血まみれで横たわる人。泣き叫ぶ声。
燃やされるバリケード。
力の限り殴られる医療者。破壊される救急車。

警察が引いたのを見計らって、また路地でシュプレヒコールを上げる。声の限りに叫んでいる。確かに彼らは負けていない。だけど・・・勝てるのだろうか?そう思って、いやいや、と頭を振る。恐怖を植え付けられ、無力感に打ちのめされ、支配されてきたミャンマーの歴史。それを繰り返さないために闘っているんだ。

負けるもんか。負けるもんか。

 

平和を愛する、ミャンマー人の真の強さ

 

3月3日、ミャンマー軍や警察の残虐行為により、心が一度死んだ。でも、そんな私を再び笑顔にしてくれたのも、やっぱりミャンマーの人だった。あの日の翌日、地方に住むスタッフは電話でこんな報告をしてくれた。

「今日は警察がきたらすぐに逃げられるように、バイクでデモをやったんだ。 誰も傷つかなかったから、安心して」

さらにその次の日。

「今日は座りこみのデモをしたよ。途中で警察の車がきたけど、参加者の何人かが警官に交渉しに行ったんだ。僕たちは平和にやるから、撃たないで。僕たちにはデモをする権利があるはずだ、って」

・・・そんなやり方があったのか。あまりに純粋で真っすぐで、胸が詰まる。恐ろしくないはずはないのだ。ミャンマー全土で、無抵抗の市民が何十人も撃ち殺され、何百人も刑務所に入れられたのだから。それでもミャンマー市民は、ひるまずに声を上げ続ける。自暴自棄になるのではなく、命を大切にしながら、非暴力を貫きながら。

女性たちもがんばっている。

ヤンゴンでは、大通りを横切るように張られたヒモに女性用のロンジー(巻きスカート)がズラリと干された。Twitterには、道をふさぐバリケードにブラジャーを山のように吊り下げる女性の写真。実はミャンマーには、女性が履いたロンジーの下をくぐったり、下着に触れたりすると男性の権威が落ちるという迷信がある。これを逆手にとって、権威を重んじる軍や警察に対する心理的なバリケードを張ったのだ。

国軍による暴力や不当な逮捕は、今日も続いている。(3月3日ほどではないけれど、そんな比較は意味がない)

ミャンマーは平和です、とは決して言えないのだけれど、平和を愛するミャンマー人たちのおかげで、私は今日も元気に暮らしています。

動画を視聴するには

このレポートを書いてくださったNさんへのインタビュー動画は、以下の2つの方法で配信いたします。

①すでにウェイウェイのクラウドファンディングのキャンペーンにご寄付くださった方へ、限定公開のURLをご案内
②Earth Companyのマンスリーサポーター、研修プログラム参加者のみなさまが加入するFacebookグループ「Earth Lovers」で配信

2021年3月20日までにクラウドファンディングキャンペーンにご協力いただけますと、限定公開URLよりご覧いただけます。ご協力どうぞよろしくお願いします!