IMPACT HERO 2022
Samir Lakhani
サミール・ラカーニ
Eco-Soap Bank 代表
カンボジア、ネパール他
IMPACT HERO 2022
Eco-Soap Bank 代表
カンボジア、ネパール他
訪れたカンボジアの農村で、洗濯洗剤で赤ちゃんを洗う母親の姿を見て、衝撃を受けたサミ―ル。
石けんすら買えない貧しい状況にある人たちや、衛生状態が悪いことで、下痢や感染症など予防可能な病気で命を落とす子どもたちを一人でも減らすために、2014年にEco-Soap Bankを設立。世界中で毎年2.5億個も廃棄されているという未使用の石けんに着目し、工場から回収、途上国の貧困層の女性を雇用してリサイクルし、NGOや国際機関と連携して必要な人に届けることで、廃棄物削減、女性の雇用創出、衛生習慣と健康改善を同時に図る。
サミ―ルの両親は、祖父母の代に東アフリカに移住したインド系移民の2世でした。しかし、1970年代にウガンダで起こったアジア人追放事件で、全てを失い難民としてアメリカに逃れてきました。サミ―ルは幼い頃から、両親が経験したアフリカでの生活の様子や、渡米までの苦労話を聞いて育ち、順調な生活を送りながらも、いつか途上国で自分ができることをしたい、という想いを持っていました。大学では環境学を学び、カンボジアで活動に参加する機会を得ました。
2014年、カンボジアの農村部でサミ―ルは衝撃的な光景を目にしました。お母さんが人体に有害な洗濯洗剤で赤ちゃんを沐浴させていたのです。サミールが思わず話しかけると、そのお母さんは「固形石けんは高すぎて買えない」と言いました。
その言葉が頭から離れないまま、ホテルの部屋に戻り手を洗おうとした時に、石けんが数回使っただけで毎日取り換えられていることに気づきました。当時滞在していたのは、世界遺産アンコール・ワットの近く。世界中から集まる観光客のための数多くのホテルでは、毎日大量の石けんが処分されてました。しかも地域にごみ処理施設がないため、ゴミ山のような場所にただ捨てられ、環境にも深刻な被害を及ぼしているのです。
一方で、ホテルからそう遠くない村に住む人びとにとって、石けんは高価で手が届かない贅沢品でした。
ホテルから捨てられる大量の石けんを、必要な人に届けることで、環境と人びとの健康を守る。
Eco-Soap Bank(ESB)の構想は、こうしてカンボジアのホテルの洗面所で生まれたのです
すぐに行動に移ったサミ―ルは、NGO Eco-Soap Bankを立ち上げ、市内のホテルを自転車でまわり、協力を求めました。ホテル側の理解を得るのは容易ではありませんでしたが、彼らの活動に共感した協力先は徐々に増え、2019年には仕入れ先のホテルは1,200件以上になり、活動は順調に成長していました。
しかし2020年に入り、新型コロナウイルスの感染が拡大。カンボジアの観光業は大打撃を受け、ホテルからの石けんの仕入れができなくなりました。一方感染予防のため石けんのニーズは高まり、ホテルに代わる新しい仕入れ先を早急に見つける必要に迫られました。
この困難を乗り越えたのが、製造過程で大量に出る未使用の廃棄石鹸を有料で処分していた石けん工場との協働でした。工場にとっては、石けんを廃棄する代わりにESBに無料または安価で回収してもらい、さらに社会課題解決のために活用してもらうことに、大きなメリットがあったため、協働先は急速に増えていきました。
こうして石けん工場から、未使用の石けんを大量に仕入れることができるようになり、現在ESBは、カンボジアをはじめアジア・アフリカ5か国に拠点を持ち、リサイクル石けんを製造するようになりました。国際機関やNGOとの連携も拡がった今、より多くの人びとに、より多くの石けんを届けるため、サミ―ルとESBのさらなる挑戦は続きます。
サミ―ルが設立したNGO Eco-Soap Bank(ESB)のミッションは、リサイクル石けんによって、次の3つに貢献することです。
1.効果的な衛生用品である石けんと、正しい衛生習慣を普及し、人びとの健康を改善する
2.石けんの廃棄削減により、環境負荷を削減する
3.安定した収入がない脆弱な立場にある女性に、雇用と教育の機会を提供する
ESBは現在、アメリカ国内の石けん工場から回収した未使用の廃棄石けんを原料として、カンボジアを含むアジア・アフリカの5つの拠点でリサイクル石けんを生産・配布しています。
拠点工場では、その地域に住む特に経済的困難を抱える女性を雇用。彼女たちは「衛生大使(Hygiene Ambassodors)」と呼ばれ、リサイクル石けんの製造だけでなく、ESBが提供する衛生教育を、家族や地域の人びとに伝え、正しい衛生習慣を広める重要な役割も担っています。また家計管理など、基本的なライフスキルを学ぶ機会も提供されます。
リサイクル石けんは、途上国の衛生状態の改善に取り組む国際機関やNGOを通して、学校や医療機関、衛生状態の悪い地域などに届けられます。また、石けんを配るだけではなく、正しい衛生習慣を身につける教育も行われています。
2014年の設立以来、ESBは、154人の女性を雇用し、226万トンキロ以上の石けんをリサイクル、2,650万個近くの石けんをアジア、アフリカ地域の、640万人以上の人びとに届けてきました。(2022年3月時点)
IMPACT HERO 2022
サミ―ル・ラカーニ
健康改善、廃棄物削減、女性のエンパワメントに同時に挑む!
サミ―ルが設立し、代表を務めているNGO Eco-Soap Bankのミッションは、リサイクル石けんによって、次の3つに貢献することです。
1.効果的な衛生用品である石けんと、正しい衛生習慣を普及し、人びとの健康を改善する
2.石けんの廃棄削減により、環境負荷を削減する
3.安定した収入がない脆弱な立場にある女性に、雇用と教育の機会を提供する
Eco-Soap Bankは現在、アメリカ国内の石けん工場から回収した未使用の廃棄石けんを原料として、カンボジアを含むアジア・アフリカの5つの拠点でリサイクル石けんを生産・配布しています。
拠点工場では、その地域に住む特に経済的困難を抱える女性を雇用していますが、彼女たちは「衛生大使(Hygiene Ambassodors)」と呼ばれ、リサイクル石けんの製造だけでなく、Eco-Soap Bankが提供する衛生教育を、家族や地域の人びとに伝え、正しい衛生習慣を広める重要な役割も担っています。また家計管理など、基本的なライフスキルを学ぶ機会も提供されます。
リサイクル石けんは、途上国の衛生状態の改善に取り組む国際機関やNGOを通して、学校や医療機関、衛生状態の悪い地域などに届けられます。これらの支援プログラムでは、単に石けんを配るだけではなく、正しい衛生習慣を身につけるための教育も行われています。
2014年の設立以来、Eco-Soap Bankは、154人の女性を雇用し、226万トンキロ以上の石けんをリサイクル、2,650万個近くの石けんをアジア、アフリカ地域の、640万人以上の人びとに届けてきました。(2022年3月時点)
IMPACT HERO 2022
サミ―ル・ラカーニ
衛生状態が悪いことで、予防可能な病気にかかり、亡くなってしまう子どもがまだ世界にはたくさんいます。世界中で下痢症に罹る子どもの数はなんと毎年17億人。5歳未満の子どもの死亡原因の第2位で、毎年52万5千人の5歳未満児が下痢症で亡くなっているのです。
下痢症の予防には、清潔な飲み水の確保だけでなく、石けんでの手洗いも有効な手段です。子どもたちの命と健康を守るためには、家庭と学校で石けんと正しい手洗い習慣を身につけることが重要です。
※出典
https://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/diarrhoeal-disease
私たちにとって当たり前な「石けんで手を洗う」という行為。正しい手洗いは、感染症の予防に最も安価で効果的な方法だと言われています。しかしカンボジアを含む途上国の最貧困層の人々にとって、石けんは手の届かない贅沢品なのです。
“世界人口の40%にあたる約30億人は、石けんと水で手を洗う設備が自宅にない、または制限されている”
“世界の学校の43%は、石けんと水での手洗いができる設備がない。そこに通う8億人以上の子どもがその影響を受けている”
出典:UNICEF, WHO(2019)” Progression household drinking water, sanitation and hygiene 2000-2017: and hygiene I 2000-2017 Special focus on inequalities”
一方で、世界では毎年25,000トン、固形石けんにすると約2.5億個もの石けんが、製造過程で出るロスにより、一度も使われないまま製造工場から直接廃棄されています。
全世界的にも、安定した収入を得る機会を得ている女性の割合は50%に届かず、途上国の農村部ではさらに状況は厳しくなります。女性が教育と雇用の機会を得ることが、経済的に脆弱な状況から抜け出すために最も重要なことです。
世界の衛生問題に取り組むことに、人生を捧げる決意をしたサミ―ル。現在Eco-Soap Bankは、カンボジア、ネパール、そしてアフリカの3か国に拠点を広げ、活動を行っています。より多くの石けんを、より多くの人びとに届けるために、まずはアジア地域の主要拠点であるカンボジアでの運営体制を強化し、今後各拠点のモデルとして展開していくことを目指しています。
支援開始にあたり、サミ―ルとEco-Soap Bankのチームメンバー4名とミーティングを行い、Eco-Soap Bankの事業概要、今後の計画、運営上課題と感じていることなどを、確認しました。その結果、今後3年間で主に注力する支援として、以下のプランに合意しました。
サミ―ルへの支援プラン:
1. 国連難民高等弁務官事務所の支援プログラムで、バングラデシュのロヒンギャ難民43万人分の石けんを供給するために、カンボジア工場における石けん製造機械3台の購入費用6万米ドルを、2022年第2四半期までに調達。
2. アジアに石けん工場を持つ企業、石けんの供給先となる援助団体などとのパートナーシップ構築。
3. 事業拡大に向けた、財源戦略の検討とマーケティング支援。
支援開始にあたり、サミ―ルとEco-Soap Bankのチームメンバー4名とミーティングを行い、Eco-Soap Bankの事業概要、今後の計画、運営上課題と感じていることなどを、確認しました。その結果、今後3年間で主に注力する支援として、以下のプランに合意しました。
サミ―ルへの支援プラン:
1. 国連難民高等弁務官事務所の支援プログラムで、バングラデシュのロヒンギャ難民43万人分の石けんを供給するために、カンボジア工場における石けん製造機械3台の購入費用6万米ドルを、2022年第2四半期までに調達。
2. アジアに石けん工場を持つ企業、石けんの供給先となる援助団体などとのパートナーシップ構築。
3. 事業拡大に向けた、財源戦略の検討とマーケティング支援。