IMPACT HEROES CLASS OF 2025 のご紹介
アジア太平洋の各地で変革を起こしている彼らの、人々を惹きつけるストーリー、そして社会・環境課題の解決に向けた取り組みを、ぜひご覧ください!
選出された9名は、これから1年間にわたり「Lead-to-Regenerate (L2R) アクセレレーション・プログラム」に参加し、「リジェネラティブな未来をつくるリーダー」として必要な考え方やアプローチ、また事業インパクトの拡大に必要なスキルについて学びます。
支援内容:Lead-to-Regenerate(L2R) アクセレレーション・プログラム
1. オンライン・セミナー
1月から6月にかけて、リジェネラティブな未来を実現するために必要な知識やスキルを学ぶ機会を月1回オンラインで提供します。
2. ヒーローズ・キャンプ IN バリ島
5日間にわたってインドネシア・バリ島で、ヒーロー同士が共に過ごし交流を深めながら、バリ島のソーシャルセクターを通して潜在的支援者や連携パートナーと繋がる機会を提供します。
3. メンターシップ
各ヒーローの支援ニーズに基づき、事業開発、マーケティング、リーダーシップなどにおいて専門性を持つメンターをに紹介します。
4. 機会創出
各ヒーローの支援ニーズに基づき、Earth Companyのネットワークにおいて出来る限り多くの機会を随時紹介しています。
IMPACT HEROES CLASS OF 2025 の活動内容
フレシュタ・カリム Freshta Karim
活動国: アフガニスタン
運営団体: Charmaghz
ミッション: 移動式図書館を通じて、子どもたちが安心して楽しみながら学べる場を提供する
#小学生の基礎学力向上
ストーリー:
内戦とタリバン政権下の弾圧から逃れ、4歳で難民となったフレシュタ。タリバン政権崩壊後、12歳でアフガニスタンに戻り、チャイルドレポーターとしてテレビ番組で活躍した。
長年にわたる紛争とタリバン政権の影響で、アフガニスタンの学校では自分の頭で考え質問をすることが許されず、93%が小学校修了時点でも十分な読み書きができないという教育崩壊の危機にある(*)。暴力にさらされた子どもたちがトラウマを克服し、基礎的な学力を習得するために、フレシュタ自身が三つ子の姪たちに行ってきた読み聞かせの経験を活かし、移動式図書館のプログラムを立ち上げた。現在36の移動式図書館を、女性を先生や司書として雇用しながら運営しており、1日に1,500人の子どもに対して教育を届け、開設以来カブールの子どもたちが100万回以上この移動式図書館を訪問している。
フレシュタは2030年までに移動式図書館を700台まで拡大し、1日に4万人以上の子どもに教育を届けることを目標としている。
クマール・パウデル Kumar Paudel
活動国: ネパール
運営団体: Greenhood Nepal
ミッション: 絶滅の危機にありながら保護を受けられていない野生動物の生息地を確保する
#生物多様性保全
ストーリー:中国との国境沿いの自然豊かな村で様々な動物たちを身近に育ってきたクマール。特に幼い頃から惹かれてきた、センザンコウと呼ばれる全身を鱗で覆われた哺乳類は「世界で最も密猟される動物」とも言われ、残酷な手段で密猟・違法売買が行われている様子を目の当たりにしてきた。
十分な保護を受けられていない絶滅危惧種を救うため、科学的視点から野生生物保護に取り組むGreenhoodネパールを2012年に設立。生物多様性の分野で専門性を有するチームメンバーとともに、野生動物の生態や生息地、脅威、野生動物と共に暮らす人々についての調査、地元コミュニティや政府と連携した保全計画の策定と実行、違法な野生生物の取引防止などの活動を、何百万人もの人々に届けてきた。
クマールは、センザンコウ保護プログラムをネパールの主要な6つの国立公園に導入し、100万人以上の人々にその重要性を伝えることを目指している。
マッチャ・ポーニン Matcha Phornin
活動国: タイ
運営団体: Sangsan Anakot Yawachon Foundation
ミッション: 先住民の若者、女性、LGBTIQAN+の人々をエンパワーし、権利の向上を目指す
#先住民族の権利向上
ストーリー:マッチャは、タイ北東部のラオスとの国境沿いの村で、少数民族のシングルマザーの元、7人の兄弟姉妹の1人として生まれ育った。児童労働に従事し1日わずか1ドルを稼ぎながら、毎日往復18kmを歩いて学校に通っていた。少数民族のレズビアンとして多くの差別に直面してきたが、大学在学中に多くのLGBTIQの学生が同じような問題に直面していることを知り、若者の未来のために闘う人権活動家としての道を歩み始めた。
Sangsan Anakot Yawachon Foundationは、チェンマイでユースセンターを運営し、20年以上にわたりタイとミャンマーの国境沿いで市民権を持たない少数民族の若者たちを含む、先住民族コミュニティの支援を行ってきた。過去には1,000人以上の若者たちに奨学金を支給。2024年1年間に、1,000人以上の若者に支援を行ったマッチャは、今後10年間でその支援を1万人以上に広げたいと考えている。
ムハンマド・タムジッド・ラフマン Mohanmad Tamzid Rahman
活動国: バングラデッシュ
運営団体: BloodLink Foundation
ミッション: 新たな輸血システムを確立し、緊急輸血不足による死亡率をゼロにする
#輸血不足 #医療格差
ストーリー:現在17歳のタムジッドが高校2年生のとき、癌で闘病中の友人が緊急輸血を必要とする状態となった。学校や家族の必死の努力もむなしく、ドナーを見つけることができずに、その友人は亡くなってしまった。人口の1.3%しか献血を行わず毎年5万5,000人が輸血を受けられないために命を落としているバングラデシュにおいて、そのよう悲劇を二度と起こさないため、自身も癌のサバイバーであるタムジッドは輸血を必要とする人と献血者をつなぐシステムを確立することを決意。
Bloodlink Foundationが保健省、情報技術省、政府、UNDPなど多くの関係者を巻き込んで立ち上げた輸血のマッチングシステムは、これまで1,200人以上の命を救ってきた。さらにタムジッドは1万6,000棟の病院と連携して新たな輸血管理システムを導入し、バングラデシュで年間に必要とされている130万件の輸血すべてをカバーすることを目指している。
ニダ・ユサフ・シェイク Nida Yousaf Sheikh
活動国: パキスタン
運営団体: Tayaba Welfare International Association
ミッション: 水不足の地域で大量の水を女性でも簡単に運べる安価なタンクを導入し、パキスタンのすべての人が清潔な水にアクセスできるようにする
#気候変動 #水不足 #衛生
ストーリー:世界で最も気候変動の影響を受ける国のトップ10に入り、水不足をはじめとした深刻な課題に直面しているパキスタン。農村部の2,200万人が清潔な水を利用できず(*1)、70%の家庭が汚染された水を使用している(*2)。ニダは、農村部で女性たちが水を手に入れるために重い容器を抱えて4時間以上も歩かざるを得ず、それが慢性的な身体的不調につながっている現状を見て、課題の解決に取り組むことを決意。
Tayabaは、40リットルの水を最小限の力で体に負担をかけず運ぶことができる「H2Oホイール」を開発し、50以上のパートナー団体と協力して、3年間で50万人以上の人びとに届けてきた。そのほか、再生可能エネルギーを用いて飲用可能な水を生み出す装置や、再利用可能な生理用パッド・石けん等の衛生用品を備えたキットを提供し、低所得の女性の生活支援を行ってきた。ニダは気候変動の影響を大きく受ける地域の回復力を強化して水不足問題を解決し、2030年までに2,500万人に支援を届けることを目指している。
*2 ユニセフ
リチャ・グプタ Richa Gupta
活動国: インド
運営団体: Labhya
ミッション: 政府と連携して公立学校にウェルビーイング教育を導入し、子どもたちのウェルビーイングと学力を向上する
#子どものウェルビーイング
ストーリー:16 歳のときに始まったリチャの教師としてのキャリアは、2 人の生徒を暴力と病気によって失ったことにより転機を迎えた。 リチャ自身も大きなショックを受けたが、それ以上に、残された生徒たちは大きな困難に直面していた。彼らは、友人の死という出来事に対して向き合い、処理するための手段を持っていなかったのである。この経験から教育者としての真の目的は子どもたちのウェルビーイングであるべきだと悟ったリチャは、教師を辞め、2017年に2人の共同創設者とともにLabhyaを立ち上げた。
Labhya は、インドの3つの州で、公立の2万2,000校に、子どもたちのウェルビーイングを向上しながら効果的に学習することができる「社会的感情学習プログラム」を導入し、240万人に届けている。2030年までに、インド全土の3,000万人の子どもたちにこのプログラムを届けることを目指している。
ルクシャナ・カパリ Rukshana Kapali
活動国: ネパール
運営団体: Queer Youth Group
ミッション: 性的指向、性自認、性的特徴に関わらず、すべての人々が生きやすい法体制と社会を作る
#LGBTIQ+の権利向上
ストーリー:ルクシャナは先住民族出身のトランスジェンダー女性で、現在法学部の4年生。最初は大学で言語学を学ぼうとしていたが、トランスジェンダーであることを理由に入学を拒否されたため裁判を起こし、それが法律を学ぶきっかけとなった。2021年以来、政府に対して法的な性別認定を求めて50回以上の訴訟を起こし、ネパールのトランスジェンダーとして初めて”女性として認める”という判決を勝ち取った。
Queer Youth Groupは、LGBTIQ+の人々の権利確立のための訴訟や啓蒙活動、プライドパレード開催等のコミュニティ構築により、すべての人の権利が認められる社会を目指している。南アジアの中ではLGBTIQ+先進国と考えられているネパールだが、実態としての法制度の整備や社会の受け入れはまだまだ不十分。ルクシャナは、ネパール社会の変化を牽引するリーダーとして期待されている。
ティモシー・フィジャ Timothy Fijal
活動国: インドネシア
運営団体: Astungkara Way
ミッション: バリ島で農業と観光のリジェネラティブなモデルを構築し、世界のモデルケースにする
#リジェネラティブ農業 #リジェネラティブ観光体験
ストーリー:カナダ出身のティムは、インドネシア・バリ島にあるインターナショナルスクールで働きながら地元農家と交流する中で、化学農業による土壌の劣化と、「儲からない」というイメージから若者が農業への関心を失っていることに課題を感じ、リジェネラティブ農業の導入に取り組み始めた。リジェネラティブ農業へ切り替えることで、農家は収穫量を維持しながら付加価値の高い米を作ってバリ島のホテルやレストランに売り、収入を増やすことができる。すでに200軒の農家とパートナーシップを結んでおり、2030年までにバリ島の田んぼの10%にあたる7,000ヘクタールにリジェネラティブ農業の導入を目指している。
Astugongkara Wayは農業のほか、リジェネラティブなツアーの企画・運営も行っている。オーバーツーリズムや観光開発による田畑の減少が大きな課題となっているバリ島を、リジェネラティブ観光のモデルケースにするために奮闘している。
ウトカルシュ・サクセナ Utkrash Saxena
活動国: インド
運営団体: Adalat AI
ミッション: AIを活用してインドの司法制度を革新し、迅速で公正な裁判を受ける基本的な権利を保証する
#司法制度改革
ストーリー:ウトカルシュは弁護士としてインドの地方裁判所・高等裁判所で勤務していた。しかし働き始めてすぐに、弁護士がどれだけ懸命に働いても、司法システムが円滑でないために、クライアントが大きな不利益を被るケースが多々発生しているという課題を実感。非効率で時代遅れのプロセスや法廷手続きの大幅な遅延により、500万件の刑事事件裁判が係争中であり、すべてを裁くのに300年かかると言われている。
2024年にAdalat AIを共同設立。AI を活用して開発されたサービスは裁判完了までの時間を30-50% 短縮でき、すでにインドの法廷の 20%で導入されている。
同性婚の権利をインド政府に対し訴える当事者でもあるウトカルシュは、裁判の遅延により影響を受けている1億人を救うため、国内全法廷に導入を目指す。さらに、インド同様イギリスの司法制度にならっているガーナ、ナイジェリア、ケニア、バングラデシュ等の国にも展開し、グローバル・サウス全域で2億人以上にサービスを提供したいと考えている。