スタディツアー報告:メードインアジア、イノベーションの生まれるところ(前編)

どうすればイノベーションが生まれるか、

本や記事、誰かの話で聞いたことはたくさんあると思います。

でも実際にそのタネが生まれるプロセス、瞬間を体験したことがある人は限られるのではないでしょうか。それも「メードインアジア」のイノベーションの誕生を。

今回は、2018年4月に開催したバリ島ソーシャル研修プログラムから、ソーシャルイノベーションが生まれるところをレポートしたいと思います。

4月21~22日の週末に、ブルーシードバッグでグッドデザイン賞を取った日本のBridge Kumamoto、国際的なデザイン賞レッド・ドットを取った韓国のOBXET、様々な体験を開発するdot button companyとアジア太平洋の社会起業家を支援するアース・カンパニーで、「デザインで社会問題を解決するワークショップ」をインドネシア・バリ島でおこないました。

 

国際的に活躍するデザイナー、クリエイター達ですが、

  • デザインは好きだが、仕事となるとつまらなくなることも…。
  • クライアントの担当者とだけ向き合う日々だと、自分のスキルが社会に役立つのかわからなくなる。
  • プログラマーにとってのハッカソンのように、デザイナーが集まって一緒に何かを作る場を持ちたい。


と、多くの働く人たちと同じような違和感、モヤモヤを感じていました。

 

だったら、多くの社会問題も、それに取り組むイノベーターも身近にあるバリ島で、日常から離れて本気で「デザインで社会問題を解決」してみよう!

と、本企画が立ち上がりました。

 

貧困や格差、伝統文化の衰退などいくつもある課題の中で、今回デザイナー達が選んだのは「ゴミ問題」。それをものづくり、プロダクトデザインによって解決(少なくとも課題を減らすことを)することを目指します

イノベーションの4つの条件(前編)

4月のある週、忙しい合間をぬって、東京、熊本、ソウルからデザイナー達が集まってきました。

ゴミ問題を解決するプロダクトをアウトプットするために、バリで使える時間は2日半。

バリでのゴミ問題の現状や解決に取り組む人たちについてアース・カンパニーが、廃材やゴミを活用した世界のプロダクト事例を紹介し、各参加者(チーム)も事前にリサーチしているとはいえ、どんなものを作るか、チームでの合意はまだ何もありません。

美しい自然、田んぼに囲まれた早朝ヨガで始まる1日目。

初めて、あるいは10年ぶりのバリで、チームに高揚感が溢れる中、バリ最大のゴミ投棄場所に向かいます。

空港近くの幹線道路から1本入ったその場所には、想像を絶する光景が待っていました。

20万とも40万平米とも言われる広大な土地に高さ15メートルまで積み上げられたゴミの山

焼却処理場がないバリの各地から、毎日数百トンのゴミが持ち込まれ、今もゴミ山は増殖し、強烈な異臭を放っています。

そこでは、リサイクル業者が買い取るプラスチックゴミなどを集める人たちが500人以上働いています(もちろん誰かが雇用している訳ではないです)。

道路1本挟んだ隣には、彼らの家族、数千人が暮らす貧しいコミュニティがあります。

経済状態も衛生、栄養状態も劣悪なそのコミュニティのために、小さな学校を運営するNGO(バリの別の地域で孤児院やスキルトレーニングセンターも運営)の案内で問題の深刻さ、コミュニティの現状を伝えられ、自然と言葉少なになるチーム…。

1時間ほどの滞在の最後、「ゴミ山に登ろう」とチームの一人が登り始めました。

生ゴミやプラスチックゴミ、人が生活する中で出るあらゆるゴミが集められたその山を歩き、頂上までたどり着くと、その先にはさらに広大なゴミが果てしなく広がっていました。

最初に登り始めた一人がぽつりと

「普通にこの課題に向き合うと、その大きさに絶望しかない。さて、どう取り組もうか」

とこぼし、

「ゴミの問題はどこの国でもあること。日本も見えにくくなっているだけで、実は同じはず」

とつぶやいていました。

振り返ってみると、私はここに、イノベーションの条件を2つみます。

一つは、「強烈な問題意識」です。「課題に対する現場感」とも言えます。

ゴミ問題について、ネットやニュースで知ることは頭、思考を使ったものですが、ゴミ山では、その問題を視覚、聴覚、あらゆる感覚(五感)で深く感じ取り、そこに暮らす人たちの感情にも触れ、強烈な体験としてチーム全員に刻み込まれました。

この体験は二つ目のイノベーションの条件、「思考の粘り強さ」にもつながります。

ゴミ山に行った後の話を少し先取りしてしますが、プロダクトアイディアを考える10時間以上の議論の中、チームの誰一人として・できない、自分たちには無理だ・バリの問題であって、自分たちには関係ないといったネガティブな言葉を発しませんでした。

その思いが頭をかすめることはあったかもしれませんが、課題解決のために自分たちは何ができるか、をしつこく、粘り強く考え続けました。

その前向きな姿勢はチームに良い影響を与え、新しいアイディアにつながります。

〈筆:Earth Company経営企画・プログラムマネージャー 田丸〉

 

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