【世界難民の日企画】「認め、話し合うことからすべては始まる」差別のない未来を創るためのウェイウェイの思い

6月20日は「世界難民の日」です。

現在の世界最大の難民キャンプは、バングラデシュのコックスバザール。2017年8月にミャンマー軍が行ったロヒンギャ掃討作戦により、故郷を追われた約100万人のロヒンギャが今も先の見えない不安のなかで生活しています。

Earth Companyが支援するIMPACT HERO2019 ウェイウェイも、ロヒンギャ出身。自身も「父親がアウンサン・スーチーと一緒にいた」という理由だけで18才の時に投獄されたウェイウェイは、「実は理由はそれだけではない。家族まで逮捕されたのは、私がロヒンギャだったから。家族全員が逮捕されたのは、ロヒンギャだった私の家族だけだった」と語っています。

多民族国家で少数民族への差別が根強いミャンマーで、民族の壁を超えて差別のない本当の民主主義と平和な社会を築くために、平和教育活動を展開するウェイウェイ。

今、世界はアメリカで発生した事件を発端に黒人への人種差別撤廃が大きなムーブメントになっていますが、ロヒンギャ問題もロヒンギャへの差別が解決を困難にしている要因の1つでもあります。

こうした状況のなか、ウェイウェイがEarth Companyが開催するオンライン講座「SOIL for Change makers」に登壇し、今の人種差別に対してどのように考えているか、オバマ・ファンデーションのプログラムのために留学してるアメリカのヴァージニア州から語ってくれました。

「人は差別や偏見をもってしまう生き物」
それを認め、受け入れることから始まる

自分と違うものに対する不安や恐怖心は誰にでもあります。

人間は自分と似ているものが好きですから、自分と同じ肌の色、宗教観の人に対して「居心地がいい」と感じるのは仕方がないことですし、そういう気持ちをもつのは自然だと思います。

しかし、自分とは違う人間に対する違和感が極端になってしまうと、それが「差別」になってしまいます。今、アメリカで大きな問題になってますが、「自分と違うもの」に対する差別は世界中どの国にもあります。これは人類として戦い続けなければならない、根深く大きな闘いです。

それでも自分との違いを認め、
相手を受け入れる人も増えている。それこそが希望

今、アメリカで大きなムーブメントが起きていますが、アメリカは世界で一番自由な国といっても過言ではなく、ここには表現の自由があります。

現在の政権になってから、人種差別や憎悪、不平等はより顕著化していますが、一方、自分と違う人種や価値観、宗教観を認め、違いを歓迎する人もたくさんいて、社会はますます二極化しています。そして、今のアメリカでは後者のほうが多数派だと私は感じています。

それこそが解決への道ですし、このバランスがアメリカの美しいところだと思います。このバランスがある限り、時間はかかってもアメリカではこの問題は解決に向かっていくでしょう。

最も恐ろしいのは「無知」であること
「無知」を生み出す2つの要因

しかし残念ながら、私の母国のミャンマーにはそもそもこのバランスがありません。もしこのような人種差別に起因する事件が国内で起きても、声をあげてくれる人はいないでしょう。世界の多くの国ではそうだと思います。

 

こうした差別の根本的な問題は、その相手を知らないこと、無知であることです。たとえば、アメリカでは街によって教育のクォリティが全く異なり、それが人々のダイバーシティへのマインドセットに大きく影響しています。

そして無知を生み出しているのには、大きく2つの要因があると考えています。

1. 学校、家庭、コミュニティにおける「対話の機会」の欠如

1つが、「対話の機会」が欠如していることです。

差別は相手の価値観や人間性を知らない「無知」から生まれます。いろんなバックグランド、肌の色の人がいるけれども、みんなが同じ人間であることに気づくことができるように、よりマイノリティの人たちの声に耳を傾けダイバーシティに触れる機会を学校でも家族でもコミュニティでも設けることが必要だと思います。

「対話の機会」を創ることは、差別のない未来のために最も有効なアプローチの1つです。

2.同じテーブルで話し合うことすらできない力関係

差別問題では、差別をする側とされる側に力関係があることも少なくありません。特にロヒンギャ問題では、国民の多数を占める支配者側と、少数民族という力関係に強弱があり、その力関係が問題解決を難しくしています。

そしてロヒンギャの人権は守られていないので、学校に行くことができず、ビルマ語が話せない人も多くいます。力関係や言語の問題から、そもそもビルマ人と理解しあうために必要な「対話の機会」が作れません。ロヒンギャ問題では、これが大きな原因となっています。

解決のためには、まず社会的弱者の人権を守り、教育機会を設け、経済的なステイタスをあげる努力をして初めて、同じテーブルで議論ができるようになります。今は、そもそもそのスタートラインにすら立つことができていないのです。まずはその同じテーブルで話合えるように、社会的弱者を支援し、ステータスの向上を図ることが先決です。

差別は偏見は、簡単につくられるものではなく、学校の教育や家族、コミュニティ、社会全体や政治などいろんな背景があり、それぞれのファクターによって長い時間をかけて形成されるので、解決するためには包括的に取り組む必要があります

複雑な背景を1つ1つひも解いて、1つ1つにアプローチしていかなければならないので、長い時間も必要です。

差別と偏見のない社会に向けて必要な3つのこと

このような人種差別や、自分と異なる人間に対する差別は黒人やロヒンギャだけの問題ではなく世界全体の問題です。

それを解決し、差別や偏見のない社会のために向かっていくには、私は3つのことが必要だと思っています。

1.差別問題への関心と理解

まず1つめは、先ほども申し上げましたが、この問題に関心を持ち、理解する努力をすることです。

アメリカに関していえば、根底にある原因は、人々の中にも、社会にも政治にもシステム全体にも奥深く根付いてしまっています。深く根付いているからこそ、「これは差別でもなんでもない」と公に発信している人もたくさんいます。

自分の回りや社会で起こっている問題を理解するためには、まず当事者の声を聴くこと、関わることが第一歩です。

そして声を聴いたからには共感し、実際に自分の周りで起こっていることを認めることが必要です。

2.共感力とビジョンをもった「人々のための」リーダーシップ

そして次に必要なのが、リーダーシップです。

社会構造の変革には、現状を理解して相手に共感するリーダー、人々の声に耳を傾けるリーダー、そしてビジョンやミッションを持って社会を変えようとするリーダーが必要です。

残念ながら、今はそのようなリーダーはいません。先日も現在アメリカで起きている人種問題について取材をうけましたが、アメリカだけでなく、世界中のリーダーがこの件に対してどうアクションするのかを期待しています。

3.差別を作り出さない法整備と、セクターを超えたコレクティブインパクト

そして最後に最も重要なのが、法と政策の整備とその導入です。しかし、これが最も根深い問題で、政府だけでなく、いろんな組織が一丸となり、トップダウンとボトムアップの両方で取り組まないと成しえることができません。

構造的な改革を行うには、どういう法律が、どういう政策が不平等や差別を作りだし、それを現場でどのように導入することが差別を促進しているのかを見直す必要があります。

どんな組織や政府のどの部分が差別を生んでいるのかを認識する必要があるので、政府だけでは解決せず、様々な組織が一緒に取り組まなければなりません。

人種差別は非常に大きな問題ですが、それは「小さなこと」が積み重なって成り立っています。だからこそ、何かの単独の施策がどうにかできる問題ではなく、その「小さなこと」を整理して大きな問題を動かせるように取り組んでいくことが解決への道だと考えています。

(IMPACT HERO 2019 ウェイウェイ・ヌー)

 

 

民族に対する壮絶な差別、虐殺を経験し、政治的・宗教的にも解決の糸口がなかなか見えないロヒンギャ問題に取り組むウェイウェイから語られた、「人は差別や偏見を持ってしまうのは仕方がない。問題の解決は、それを認め、受け入れることから始まる」という言葉はとても重みがありました。

差別は人種に対してだけでなく、日本でも最近では医療従事者やコロナ罹患者に対する「コロナ差別」が社会問題になり、私たちにとっても身近なことです。

この難民の日をきっかけに、壮絶な差別問題と闘うウェイウェイの話に耳を傾け、差別を「そんなことは自分の身の回りにはない」と見過ごすのではなく、問題に目を向け心を寄せることから、始めてみませんか。