11月 19, 2021

とますか日記 VOL.12:COP26の結果に思うこと

13日夜、「人類にとってのターニングポイント」、「1.5Cを守る最後のチャンス」と呼ばれた国際会議COP26が、「グラスゴー気候協定」を採択し閉幕しました。久々のとますか日記は、このCOP26について、私・濱川明日香の思いを綴りたいと思います。

13日夜、「人類にとってのターニングポイント」、「1.5Cを守る最後のチャンス」と呼ばれた国際会議COP26が、「グラスゴー気候協定」を採択し閉幕しました。久々のとますか日記は、このCOP26について、私・濱川明日香の思いを綴りたいと思います。

 

COP26の成果

 

「気温上昇を産業革命前に比べて2度未満に抑え、できれば1.5度に抑える」ことを目標としたパリ協定から6年。研究は進み、人類を含む地球の生態系への甚大な被害を避けるためには、2℃ではなく1.5℃以内に抑えなければならないことが世界の共通言語となりました。

最大の焦点は、「1.5度目標」を可能にする削減目標を策定し、それに伴い石炭の段階的廃止を加速させる具体策を提出できるかどうか。

脱炭素化をリードする世界のリーダーや活動家たちからは、「このCOPが最後のチャンス」という気迫が感じられました。

 

その影響もあり、

  • 世界の平均気温の上昇を産業革命前から1.5度に抑える努力を追求し、石炭火力発電を「段階的に削減」すると明記された協定が採択
  • 46カ国が石炭廃止を表明(うち23カ国初表明)
  • 2030年までに森林破壊停止、COP26で100カ国超が署名
  • 米国やカナダなど20カ国が石炭だけでなく、天然ガスや石油などすべての化石燃料の国外での公的融資の停止で合意

などの前向きな結果を残すことができました。

これらにより、今回新たに引き上げられた削減目標を長期的に全て達成したとすると、気温上昇は1.8Cに留められる可能性があると発表され、初めて今後の気温上昇を2度未満に留めるに足る各国目標が提出されました!

森林破壊は気候変動を悪化させる最も大きな原因の一つで、今回「森林など自然の力の活用推進」は焦点の一つであったため、2030年までに森林破壊を停止することに100カ国超が署名したことは大きな進歩でした。私たちが支援するIMPACT HERO 2021アリーフ・ラビックは、まさに木材を竹で置き換えることで森林伐採の需要を飛躍的に減らしつつ、竹林でCO2を吸収し、新たな再生産業で貧困解決も同時に行おうとしています。まさにその革新的なソリューションを世界に紹介するためにCOP26に向かいましたが、今後さらに世界に注目されていくことが見込まれます。

 

思わぬ結末

 

2週間の会議は1日延長し、最後の最後まで197カ国が交渉を重ねた末に、なんと全体会合の一番最後でインドが異議申し立てをし、会議は急きょ中断に。中国もインドに同調し、米中印EUの代表が別室に移動して協議した結果、最終的に「石炭火力発電を段階的に廃止」という文言から「段階的に削減」へと薄められてしまいました。

これには各国代表たちも落胆を隠せず、ツバルの気候大臣は孫の写真を見せて「帰国して、君たちの未来を守ることができたよと言えたら一番素晴らしいクリスマスプレゼントになったが、それは叶わない」、またマーシャル諸島の代表団も「国に戻っても子供に胸を張れない」と遺憾な気持ちを表現していました。

画像出典元:COP26: Tuvalu minister makes emotional climate plea

 

途上国がこのような遺憾の念を表現することは今回に限ることではありませんが、驚いたのは、会議閉幕前に、イギリスのCOP26議長が「皆さんに謝罪します、本当に申し訳ない」と全体会議を前に謝罪し、声を詰まらせ涙したことです。しばらく話せなくなってしまった議長のその様子に、各国代表が立って大きな拍手を送ったシーンは私も胸が熱くなりました。

画像出典元:BBC News Japan

 

文言のダウングレードは、破綻寸前だった合意自体を守るための不可欠な対策だったそうです。インドが「貧困解決や開発目標もある、完全な廃止は難しい」と異議申し立てたことが国際合意の足を引っ張った形となりましたが、インドが2070年までに排出ネットゼロを目標とすると表明したこと自体は評価され、この異議申し立てにより合意全体を破綻させるのはもったいない、という2週間の進歩と協定を救うための苦肉の策だったようです。

残る課題

課題はまだまだ山積みです。

新たな削減目標が出されたものの、それを実現するための具体的な策は提出されていないこと。
それら削減目標を長期的に全て実現すれば1.8Cに気温上昇を抑えられるが、短期的にしか実現できなかった場合2.4Cの上昇が見込まれること。
たとえ気温上昇を1.8Cに抑えられたとしても、守られない命、地域が多々あること。

画像出典元:Climate Vulnerable Forum

 

今回のCOPでIMPACT HERO 2017のキャシーは、「マーシャル諸島にとってはCO2削減だけではもう遅い」と伝えました。マーシャル諸島のような気候変動脆弱国はすでに多くの損失や被害を被っている。排出国たちは、それらを補償し、島の底上げや人工島の建設などマーシャル諸島の死活に関わる大規模な適応策を資金援助する必要がある、と。

しかし、気候変動の影響を一番先に受ける国々が、被害に対応し、適応するに必要な資金を捻出することは到底できないですし、理にかなっていません。先進国が途上国に対して、2020年までに官民合わせて年間1000億ドルを供与するという約束も未だ守られず、動員額は2019年時点で800億ドルにも達していません。

ウガンダの24歳の女性活動家バネッサ・ナカテさんの「『飢餓』に適応することはできない。『絶滅』に適応することも、失われた文化や伝統に適応することも」という言葉は説得力がありました。

バルバドスのミア・モトリー首相は、「2度の気温上昇は、私たちのような国にとって『死刑』を言い渡されているのと同じだ」とも。

大事なものを失う前に、結果を出さなければならないのです。

ポジティブな変化

 

課題は残るものの、世界の潮流にポジティブな変化もあったと感じます。特に今回のCOPは、各国(特に先進国の)リーダーが使う言語やトーンが変わってきた印象を受けました。

​​将来振り返った時に、「あのCOPから人類は気候変動の潮流を変えた」と言えるCOPにする責任が私たちにはある。 
-イギリス・ジョンソン首相

全ての人が、人類の生死に関わる意思決定、この地球全体を影響する意思決定をできるわけではない。でもこの会議室にいる私たちは、そんな意思決定をする機会を与えられている。 
-ジョン・ケリー米国気候変動問題担当大統領特使

私の1歳の孫キースは2050年に31歳になる。もし私たちがこの会議で成功すれば、彼は居住可能な環境に生きていることになるが、私たちが失敗すれば、彼は誰かと資源を争う世界に生きることになる。それが私たちが突き詰められている現実だ。私は彼の未来に平和と繁栄を望む。この会議室にいるみんなの子供や孫にも同じことを願う。これは政治の問題ではない。パーソナルな問題だ。
-フランス・ティマーマンスEU気候担当者

これらのスピーチは、一部のリーダーたちの意識や焦点が「国益」だけでなく「自分の大事な人を含む『人類』また『地球』を救う」という、本質的かつパーソナルな視点へとシフトしてきていることを示しているようにも感じました。

最後に

 

バルバドスのミア・モトリー首相は「人類の1/3が繁栄する背景で、残りの2/3はウェルビーイングへの悲惨な脅威を受ける中、地球に平和と繁栄が本当にあると言えるのか」と訴えました。本当にその通りだと思います。

被害を受けるのが海の向こうの人なら良いのか。見えない誰かなら良いのか。そんなわけはない。彼らにも子供がいて、孫がいて、守りたい人がいることに変わりはないのです。

イギリスの動物学者デイビッド・アッテンボローがスピーチの中で言及した通り、私たちは地球史上で一番優秀な種自分たちで作り出したこの問題を解決できないわけはない

キャシーや、アリーフは、私たちの未来のために、私たちができないことをし、代わりに闘ってくれている人たちです。私たちの子供たちや次世代のためにも、まだ海の向こうの誰かの大事な人たちのためにも、そして世界の平和を願うならば、犠牲を生み出した豊かさに浸かっているわけにはいきません。私たちもしっかりとこの問題について知る努力をし、子供たちの未来を守る行動を明日に先延ばしにせず、子供達に胸を張れるよう毎日生きなければ、と気持ちを新たにしました。

Earth Companyも心新たに、未来を変えるチェンジメーカーたちのインパクトを加速させるため精一杯支援し、未来を作る人材の育成に努めていきますので、引き続き、応援よろしくお願いいたします!