ご報告:第1回「現代のマザーテレサ」ロビン・リムに学ぶ!ブミセハット国際助産院研修プログラムレポート
お母さんと赤ちゃんの人権を尊重し、完全母乳を実現する愛に溢れるブミセハット流のお産モデルは国内外から注目され、年間6,000名以上がバリ島ウブドのクリニックを訪れ、学んでいます。
2019年4月、多くの日本の助産師のみなさまのご要望にお応えし、4日間、ロビン・リムの研修を日本語の解釈付きで学べる「第1回ブミセハット国際助産院研修プログラム」をバリ島ウブドで開催しました
涙と笑いと愛に溢れた濃密な4日間
「現代のマザー・テレサ」助産師ロビン・リムから直接学ぶやさしいお産。
バリの正装に身を包み、厳かに行われたバリ式参拝から始まり、ロビン自宅の子宮の形をした釜で焼くピザパーティーで締めくくった涙と笑いと愛に溢れた濃密な 4 日間のプログラムには、日本各地から 12 名の助産師、ドゥ―ラの方々にご参加いただきました。
「助産技術」のセッションでは、産痛緩和スキルとお産のロールプレイ、肩甲難産の介助技術のレクチャーを受講。
ロビンが実践する「やさしいお産」は、母子とご家族に心を尽くすお産で、出産時に産婦さんに幸せを感じてもらって、オキシトシン(幸せホルモン)をたくさん放出してもらい、、命の誕生の瞬間を大切に、大切に迎えるようにしています。
その「やさしいお産」のロールプレイでは、ロビンを筆頭に参加者の皆さんも迫真の演技で会場はものすごい熱気となり、赤ちゃんが生まれると笑顔と拍手が起こり、温かい雰囲気に包まれました。
産婦役をされた方は、皆に祝福されたのがとても嬉しかったとのことで、ロールプレイにも関わらず、オキシトシンがたくさん放出されている様子でした。
皆さんイキイキされていて、どれだけお産を、母子を愛しているかが伝わってきた時間です。
体験と気づきをシェアするグループワーク
「予期せぬ事態でのサポート」のセッションでは、緊急帝王切開での出産、早産、死産、赤ちゃんに異常があった場合など、母子とご家族に配慮が必要なケースについて、グループワークを実施。
自身の経験を語り、語ることで気づき、気づきをシェアすることで沸き上がる感情の渦。
中には自身の辛かった出産経験を語り、本当は傷ついたことを聴いてほしかった、それを癒す為に助産師になったんだと気づくことができたと話す方もいらっしゃいました。
その話を聞いて、 母子とご家族との関わりが走馬灯のように思い出され、 自分の関わりやケアに対する葛藤や、自分も傷つき、哀しみの感情が私の中にもあったことに気がつき、抑えていた感情が溢れてきて、涙とともに自分の中から流れ出ていく感覚があり、心が軽くなりました。
皆で輪になり、流れる涙を見てロビンは言いました。
「私たちの心は庭。庭には水が必要。だからたくさん泣いていい」
全員で繋いだ手と、ロビンが 1 人 1 人の目を見て優しく語りかけた ”I love you” に癒されました。
20年以上、寄付だけで運営される奇跡の助産院へ
そしていよいよ、24時間365日、貧しい妊産婦に無償医療を提供する「ブミセハット国際助産院視察」。
全ての運営費は寄付で賄われているこちらの施設は、寄付で納められた絵画などの作品が飾られ、素敵な空間になっていました。医療やケアに必要なものはコンパクトにまとまっていて、とても清潔。スタッフの方々もホスピタリティーに溢れていました。
陣痛中のご夫婦や、産後の母子とご家族が穏やかな表情で過ごされていて、素敵なお産をされたことがうかがえました。
「胎盤の神秘」とロビンの信念
「胎盤の神秘」のセッションは、経験豊富な参加者も興味津々に聞き入っていました。
胎盤と胎児は同一遺伝子で双子のようなもので、胎盤も行き交う臍帯血も赤ちゃんのもの。
赤ちゃんの障がいの多くは貧血を起因としているので、胎盤や臍帯にある血液を全てあげることが大切になります。そのチャンスは、胎盤と赤ちゃんがへその緒でつながっている出生時のたった1度だけ。だからこそ、ブミセハットでは、臍帯をすぐに切断せず、数時間後もしくは自然に脱落するまで胎盤と赤ちゃんは繋がったままにします。
臍結紮を遅らせなければ、免許を剥奪される国もある中、早期臍結紮・切断、胎盤娩出がスタンダードな日本。
データやエビデンスに基づいて、母子にとって最善を尽くすことは助産師としての責務ですが、世界のスタンダードは変化しつつあることを知り、その先頭を走り続けるロビンの信念の強さを感じました。そして、赤ちゃんにとって、ありのままの全てのポテンシャルを持ってうまれることの大切さとそれを守る使命を感じました。
ロビンの「やさしいお産」を学んで思うこと
ロビンの「やさしいお産」を学ぶと、助産師としてのこれまでを省みて複雑な心情になることもありました。
お母さんや赤ちゃん、そしてご家族にとって、お産がトラウマにならないように、
大切にしてもらえたと思い返せるように、関わることができていただろうか…。
既存のプロトコルやルーティンワークに流されずに、疑問や信念を持って取り組めていただろうか…。
助産師として、女性として、人として、いつでも惜しみなく愛を注げていただろうか…。
責めるでも否定するでもなく、ただ、今あることを受け入れ、自分と向き合う時間。自分と繋がること、そしてまずは “Birthkeeper” が自分自身を大事にすることの大切さを感じました。
「助産師はかけがえのない仕事」~ロビンから愛のメッセージ
閉講式でロビンは力強く、参加者一人ひとりに伝えてくれました。
「助産師は、社会や地球を、お産から癒すかけがえのない仕事。次世代を癒し、守る為に与えられた Birthkeeper の手を大切にし、いつも愛の為に使ってください」
私たちにできることは、この研修で体感したことを広く伝え、決して諦めることなく信念を持って実践し続け、日本のお母さんと赤ちゃんととご家族にやさしいお産を届けること。
1 人ではなく、多様なギフトを持ったクレイジーな仲間とならできる、そう確信できました。
この研修のもう 1 つの魅力は、食を大切にするロビンこだわりの食材を使った、体にやさしいお食事とおやつ。宿泊兼研修施設となったロビンが運営する Peace Kitchen も素敵な空間で、バリの豊かな自然の中で心地よい環境が、非日常のなかで学ぶ時間を豊かなものにしてくれました。
最後に、今回の参加者の方々からいただいたご感想をご紹介いたします。
参加者のみなさまの声
参加者の声① I.C.さん (フリー助産師)
現代のマザーテレサと言われているロビンさんの愛を肌で感じられた研修でした。ロビンさんに多くの方が賛同するのは、女性を守る為には全力で立ち向かい、周りの人からクレイジーと言われたって厭わない「強くて優しくて芯がある」生き方を見せてくれているからだと思います。
「そもそも、朝夜関係ないという職である助産婦を選んだこと自体が、クレイジー」と語って下さったロビンさんと過ごした日々は、勤務助産婦を卒業した私にとって、糧となり勇気付けられた時間でした。
参加者の声② U.N.さん (助産師・病院勤務)
笑ったり泣いたり歌ったりと、心も身体も頭もいっぱいだったバリ島での日々でした。研修では実際のロビンさんのケアの実技やお産のデモンストレーションを通して、日本の大先輩の助産師さんたちのケアを間近で感じられたり、ドゥーラさんのお話を聞けたり、本当に貴重な経験をさせていただきました。
大多数のお母さんが病院で出産している今の日本で、病院でも当たり前にGentle birthができるようになったらすごく素敵だと思うようになりました。日本に帰ってから、もっといろんな素敵なお産を見にいきたいと思います。
参加者の声③ A.Y.さん(ドゥーラ)
今まで日本でドゥーラとして活動してきて、海外のドゥーラはもっと助産婦さんと近くにいて、日本では規制があってそこまで寄り添うことができていないことが悩みでした。
今回のプログラムで、ロビンさんのレクチャーを受けたり、日本の助産師の方々とたくさんお話をしたりして、ドゥーラとして初めての学びがたくさんありました。まだまだドゥーラとして妊婦さんたちにしてあげたいことはたくさんあるので、日本に帰ってからも勉強を続けたいと思います。
参加者の声④ Y.R.さん (助産師)
大事なのは、心に愛をもって関わり続けることだと思いました。お産は「十人十色」。
様々なドラマがそこに凝縮されてので、すべてを理解するには時間がかかったり、大変だったりしますが、その人のありのままの姿を受け入れ、とにかく抱きしめて「愛してる」ということを伝えることで、最初の一歩を踏み出せるということをこの研修を通じて学ぶことができました。
そして、お母さんたちへの愛だけではなく、まずは自分を愛し、そして母親として自分の子どもたちに対してもたくさん愛を表現すること、愛を次世代に伝えていくことが本当に素敵なことだと感じました。
ブミセハット・ジャパンボランティアチーム / 助産師
中島香織