多くのストリートチルドレンが存在し、児童労働や児童売春、薬物問題などの問題を抱えるフィリピンで、彼がなぜ、20年間も若者たちの更生支援を行い続けているのか。
今回のフィリピン視察をレポートします!
多くのストリートチルドレンが存在し、児童労働や児童売春、薬物問題などの問題を抱えるフィリピンで、彼がなぜ、20年間も若者たちの更生支援を行い続けているのか。
今回のフィリピン視察をレポートします!
【IMPACT HERO 2019 ジョンピエール・モンティリヤ プロフィール】
ジョンの活動の拠点となっているのは、フィリピンのイロイロ市。人口約42万人のイロイロ市には、フィリピントップクラスの名門大学であるウエストビサヤ州立大学やフィリピン大学(国立)など多くの大学が集中し、国を代表する学園都市でもあります。
フィリピンでも比較的治安が良いと言われ、日本からの語学留学先としての人気も高まっているようですが、それはイロイロ市の「光」の一面です。
このツリーハウスの先に、イロイロ市のもう一つ顔、ジョンが活動するスラム街があります。すぐ近くには、中華系の大きなショッピングモールもありますが、ここから先は別世界のようです。
写真は、ここの入り口でレストランを経営しているカバレロ一家。
ジョンの活動の協力者で、この2階をミーティング場所として提供している他、父のジョーベンはペアレントリーダーとして、息子のイアンはユースリーダーとして地域の若者たちをまとめ、ジョンも深く信頼しています。
スラム街の生活から、レストランを経営するまでになったジョーベンは、ここに住む若者たちにとって手に届く成功者でもあるのです。
カバレロ一家の家のわき道を抜けた先に広がる、スラム街の様子です。
フィリピンでは、10人中3人の子どもが貧困などの理由から小学校を卒業できず(Child poverty in Philippines )、約25万人の子どもがストリートチルドレンとして路上で暮らし、幼い子どもたちが今日の空腹を満たすために、薬物や売春に巻き込まれていっています。
その問題を解決するための活動を行っているのが、ジョンが運営するGabay Foundationです。フィリピン国内に16拠点を持ち、独自の更生プログラムで若者たちとコミュニケーションを積み重ね、20年間の活動で多くの若者の更生をサポートしてきました。
今回の視察では、ジョンの支援で更生した若者たちに話を聞くことができました。その中でもEarth Companyチームがとても感銘を受けたのがコーべ。
コーベはジョンが支援するスラムに住む19歳の青年。8歳の頃に母親を亡くし、父親はアルコール依存症で2回脳卒中を起こし、今は妹と二人で、スラムの一角の6畳くらいのスペースに暮らしています。
貧困から13歳で売春、15歳からドラッグの世界に引き込まれ、そのうちギャングリーダーとして薬物売買や犯罪に関わるようになりましたが、ジョンの支援によって今は更生し、スラムのギャングを更生させ、ストリートチルドレンの希望の星として注目され、テレビや雑誌で特集されることもあります。
そんなコーベの将来の夢は「信頼される警察官になること」で、「今の汚職にまみれた警察を内側から変えていきたい」と熱く語ってくれました。警察官になる夢に向かって、高校中退だったコーベは、大検にチャレンジし見事合格。秋から大学で犯罪学を専攻しています。
しかし、更正したからといってもコーベの生活環境は変わりません。
コーベは大学に通いつつも、大工として働きながら妹とアルコール依存症の父親の生計を助けています。コーべのように大学に通えるようになっても、生計を立てるために仕事をやめるわけには行かず、学業に専念することが困難なため、彼らにとって大学を卒業することは容易いことではないのです。
このようなストーリーをまとめた本を出版し、その収益で、コーべのような若者に奨学金を提供し、働かずに勉強に専念できるよう生活費を提供してあげることも、ジョンの夢の一つです。
しかし、このコーベの例はストリートチルドレンからの更生に最も成功したケースです。
薬物や売春に巻き込まれてしまった子どもたちは、幾つもの壁を乗り越えてそこから足を洗ったとしても、貧困から脱することは容易なことではありません。現にコーべは今も、スラムに住んでいます。
さらに犯罪歴がある元ストリートチルドレンが定職に就くのは難しく、フィリピンでは「6ヶ月雇用したら正社員として雇わなければならない」という法律があるため、更生しても5ヶ月29日で解雇され、職を転々とする生活が待っているのです。
ジョンはストリートチルドレンに対し更生支援活動を続ける一方で、更生した元ストリートチルドレンが働き、いずれ自分で事業を立ち上げられるようアントレプレナーシップを学びながら職業訓練ができるレストランと宿泊施設の運営を計画しています。
フィリピン視察後、Earth Companyではジョンに事業計画と組織作りのコンサルティングをスカイプで継続して行っています。
日本からは遠く離れたスラム街で起こっている問題に向き合うジョン。それは、日本に住む私たちには物理的にも心理的にも「遠い」問題かもしれません。
しかし、子どもたちの笑顔は万国共通。スラム街の子どもたちも、カメラを向ければこんなに元気な笑顔を見せてくれます。
この子どもたちが本当に希望を持てるように活動するジョンがその活動基盤を強固できるよう、Earth Companyはこれからもとことん寄り添って支援していきます。