4月 25, 2020

ご報告:ウェイウェイ クラウドファンディング支援報告

ミャンマーの平和を願い 2019年6月20日の「世界難民の日」に開始した、IMPACT HERO 2019 ウェイウェイ・ヌーのクラウドファンディングでは、96名の方から223万円のご寄付を賜り、民族間の平和構築を目指す教育機関である「ヤンゴン・ユース・リーダーシップセンター(YYLC)」で、4ヶ月間にわたってプログラムを運営することができました。 ご支援くださったみなさまへの感謝の気持ちを込めて、ウェイウェイとヤンゴン・ユース・リーダーシップセンターの2019年の活動をご報告いたします。

1. クラウドファンディングの経緯と成果

ミャンマーは国民の約70%がビルマ族で、残り約30%が少数民族から成り立つ多民族国家。ウェイウェイは「若い世代が本当の民主主義を学べば、彼らがリーダーになる10~20年後、よりよい国になる」と、すべての民族が活躍・共存できる国になることを目指して、自らが運営するInclusive Futures Foundationで、民族の隔たりを超えた4つの事業を展開しています。

1. ヤンゴン・ユース・リーダーシップ・センター(YYLC)

 2. 平和構築活動

 3. 国連や国内関係者に対する、女性や少数民族の人権問題に関する調査・報告

 4. バングラデシュ・コックスバザールでのロヒンギャ難民キャンプでの教育プログラム

2. ヤンゴン・ユース・リーダーシップセンターの活動

①市民教育・政治教育

2019年の7月から9月にかけての10日間、合計50時間にわたり実施されたコースでは、国際的に確立された政治研修機関の政治・市民教育カリキュラムを行っています。ヤンゴンで活躍する市民社会や政治団体の活動家など、7名をゲスト講師に迎え、政治理論やシステム、民主主義、人権、リーダーシップなど、トピックごとにインタラクティブな授業を行い、活発な議論が交わされました。

参加者16名の若者で、男女比は3:5、うち8名は少数民族でした。様々な宗教や民族の壁を超え、全員が協力的かつ熱心に授業に取り組み、満足度も96%と非常に高い数字となりました。

②相互理解を築くための英語教育

YYLCでは同時期に、初級・初中級・中級の3つのレベルで英語クラスを提供しました。

合計63人の参加者の大半は16歳から25歳の若者。学生の55%は少数民族出身で、68%は女性でした。質の高い英語教育を通して、若者同士は相互理解と信頼関係を築くと同時に、ミャンマー国外のニュースや情報にアクセスし学ぶ機会を拡げることができています。

3. ヤンゴン・ユース・リーダーシップセンターで学ぶ若者の声

僕たち若者が平和構築を学べば未来は変えられる

 JHON LA HKAUNG(キリスト教系少数民族カチン族出身)

ウェイウェイはミャンマーの民主化、そしてラカイン州で起こっている人権問題解決のために積極的に活動している女性の一人です。そんな彼女が運営するこのプログラムに参加したのは、ミャンマーの長きにわたる内戦と政治的状況が理由でした。

僕の故郷であるカチン州は紛争地域にあり、周辺の教会では多くの難民を目にしていました。

2011年から2016年にかけての紛争では、毎日銃撃や戦闘があり、中国人を含むさまざまな民間人も、戦闘地域に取り残される事態となりました。カチン州のファカント郡には、僕のようなキリスト教徒が暮らしいますが、移動を含め様々な規制が増えました。

その結果、一部の若者は生死に関わる危険な薬物を乱用するようになるなか、僕は自分を含めて若者の教育、健康、そして未来を心配しました。

そこで、市民としての権利や知識を得て、ミャンマーの民主化に参加し、いつかミャンマーの民主化を促進するために課題解決に貢献したいと思い、このプログラムに参加しました。

僕はYYLCでリーダーシップと公民を学んでいます。リーダーシップの授業では、自分のコミュニティをどのようにまとめ、情報を共有するべきかを学びました。そして公民では、人権とは何か、政治をどう考えるべきか、市民としての義務は何か、何が正しく、何が間違っているのかなどを学びました。

これは、ミャンマー人にとってとても大切なことです。若者たちは自分たちの未来のためにこうしたテーマを学び、コミュニティの中でも発信していくべきです。国内、特に地方では公民や人権を学ぶ機会は少ないですが、より多くの若者に民主主義への転換期に関心を持ってもらい、一緒に未来を変えていきたいと思っています。

4. Inclusive Futures Foundationの活動

2014年から活動を開始し、YYLCを中心にこれまでミャンマー国内の3500人以上の学生にプログラムを提供。プログラム修了生の多くは、組織のリーダーや、活発的なコミュニティメンバーとなっています。
同時に、女性に対する暴力とロヒンギャに対する人権侵害の調査・記録も行い、2019年には、女性差別撤廃条約(CEDAW)に基づく報告書を国連人権理事会の普遍的定期審査に提出しました。また、ロヒンギャに対する人権侵害に関する多くのレポートを作成し、国際的に貢献しました。

2019年12月にオランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)で行われ、ロヒンギャ問題でも特に多くの注目を集めたミャンマー軍のジェノサイド条約違反を審議する裁判でも、ウェイウェイをはじめInclusive Futures Foundationの活動が活かされました。

5. ウェイウェイの2019年の活動

2019年、ウェイウェイはトランプ大統領との面会や、日本記者クラブでの会見、国連やオバマ財団などを通したアドボカシー活動を精力的に行い、若者たちへの教育活動だけでなく国際的にも活躍しました。

なかでも、西アフリカのガンビアがイスラム諸国会議機構を代表してミャンマー政府を提訴し、ロヒンギャへの迫害を審議された画期的な裁判は、ロヒンギャ問題においても特に重要な局面となりました。

この裁判では、2020年1月に国際司法裁判所(ICJ)がミャンマー政府に対し、ロヒンギャへの虐殺などの迫害を防ぐためのあらゆる措置を取るよう命じました。ミャンマー国内や難民キャンプで暮らす多くのロヒンギャがこの判決に喜び、ヤンゴンで活動する政治家でウェイウェイの父親であるKyaw Min氏も、ロヒンギャとして初めてテレビでインタビューを受けるなど、ロヒンギャに対する風潮が国内外で大きく変化しました。

裁定は最終的かつ拘束力を持ちますが、ミャンマー側に措置の実行を強制するものではありません。未だにロヒンギャ人々が暮らすラカイン州では戦闘が発生しているというニュースも続き、難民キャンプでの生活も長期化しています。引き続き、国内での教育や平和構築のための国際的な支援が欠かせません。

6. Message from WaiWai

ヤンゴン・ユース・リーダーシップセンターのために、このクラウドファンディングを実施してくれたEarth Companyチームに感謝します。 そして何より、すべての支援者とご協力いただいた皆さまに、心からの「ありがとう」を伝えたいです。

皆さまのご支援により2019年9月から12月までの4ヶ月間、85人以上の学生に平和のためのリーダーシップトレーニングの提供と、重要な学習を続けることができました。 私たちは日本の皆さまにサポートいただき、素晴らしい関係性を築けたことに、改めて感謝いたします。

 

ウェイウェイ・ヌー

ウェイウェイ・ヌー プロフィール

ロヒンギャとして生まれたウェイウェイ。大学生だった2005年、突然警官が夜に家に押し入り、「父親がアウンサン・スーチーと議会で一緒にいた」というだけの理由で家族全員が逮捕され、裁判もなく懲役17年となり刑務所に投獄されました。

劣悪な環境の獄中で出会った女性たちの多くが、教育を受ける機会もなく厳しい境遇にあったことを知り、改めて教育機会の重要性を痛感。2012年の釈放後、米国の民間財団から支援を受けて、Women Peace Networkを設立し、少数民族、女性に対する教育、職業訓練などを始めました。

その後、少数民族や女性だけでなく、ビルマ族を含めるすべての民族に対し、法的人権保護、民族間の平和構築と社会的平等の促進活動を行うInclusive Futures Foundationを設立。ミャンマー最大都市ヤンゴンにヤンゴン・ユース・リーダーシップ・センターを設立し、平和構築のための教育プログラムを提供しています。