10月 30, 2023

【イベントレポ】ビジネスが創る、リジェネラティブな未来とは~森から、人と自然が共繁栄する世界へ

2023年10月14日、IMPACT HERO 2021アリーフ・ラビック来日記念として行われたイベントには、リジェネレーションやサステナビリティに関心を寄せる60名の方々にご参加いただきました!このブログではイベント当日の会場の様子をお伝えいたします。 →IMPACT HERO 2021 アリーフ・ラビック 来日レポートはこちら

イベント概要

 

日時:2023年10月14日(土)14:00-16:00

会場:KIGI(東京都千代田区永田町2-10-2 株式会社 Innovation Design/B corp認証取得)

登壇者:

  • Bamboo Village Trust Fund 創設者 アリーフ・ラビック
  • サントリーホールディングス株式会社CSR推進部長一木典子氏
  • 一般社団法人エシカル協会 代表理事 末吉里花氏
  • 一般社団法人Earth Company 代表理事 濱川明日香
  • 一般社団法人Earth Company 最高探究責任者 濱川知宏

 

イベント内容:

  1. チェックイン
  2. リジェネラティブな未来を創るために必要なこと(濱川明日香/濱川知宏)
  3. 「人と自然が共繁栄する未来」をつくる実践者(アリーフ・ラビック/濱川明日香)
  4. パネルディスカッション「ビジネスが創る、人と社会と自然が共繁栄する未来とは?」(アリーフ・ラビック/一木典子氏/末吉里花氏/濱川明日香/濱川知宏)
  5. リジェネラティブな未来へ歩むためにできることの紹介
  6. 交流セッション

 

→イベントページはこちら

リジェネラティブな未来を創るために必要なこと(濱川明日香/濱川知宏)

 

 

「リジェネラティブという言葉を知っている人はどれくらいいますか?」という濱川の問いかけに7割程の方が手を挙げるほど、会場にはテーマに関心の高い方たちが集まりました。今回は、Earth Companyのイベントに初めて参加する方が約半数だったということもあり、団体概要を交えながら、ミッションとして掲げている「リジェネラティブな未来」について語りました。

長年、国際開発の現場に触れてきた濱川明日香・知宏は、根本的な問題として、経済発展すればするほど社会課題・環境課題を生み出してしまうそもそもの社会のあり方を見直さなければならないという問題意識をもっています。

このあり方によって、私たちの心身も、社会システムも、また地球も過度なストレスを持ち、さらには互いに負の影響を与え合うサイクルに陥ることで「ディジェネラティブ(社会・環境課題を生まないと発展できないあり方)な社会」が増長しているのです。

今世界はサステナブル(持続可能性)な社会の実現を目指していますが、今の社会のあり方を変えずにこれまで破壊してきたものを修復するだけでは、根本解決に至りません。Earth Companyが目指すリジェネラティブな未来とは、これまでの社会のあり方を見直し、私たちの生活や消費行動が、海の向こうの人びとや自然環境も豊かにする、まさに「人と社会と地球の共繁栄」を目指すものだと語りました。

また、Earth Company最高探求責任者 濱川知宏からは、リジェネラティブな未来を実現する鍵となるのは個々人のマインドセットであり、「Trade-off思考からの脱却」「Be-Do-Haveというありたい状態を大切にする価値観」という考え方を紹介いたしました。

「人と自然が共繁栄する未来」をつくる実践者(アリーフ・ラビック/濱川明日香)

 

 

竹を使ったインテリア・デザイナーとして著名な母の影響で、10歳の頃には数百の竹の種類を言えるようになっていたというアリーフ。環境科学を専門とし、時間が許す限り森林に足を運んでいたアリーフにとって、農村部の人たちと交流しながら竹の栽培や観測をするのが最も楽しく充実した時間でした。

現在、世界の土地のうち25%が既に劣化していると言われています。アリーフは荒廃地に、竹と数種類の植物を栽培・管理する「バンブー・アグロフォレストリー」を導入することで、土地の再生と生物多様性の回復、更には農村部での収入向上を実現させる「バンブービレッジ構想」を立ち上げました。

アリーフの「バンブービレッジ構想」の素晴らしい点は、

①根の長さの異なる植物を同じエリアに植えることで、網状になった根が地中に水を貯え植物に届け土壌を回復させる
②竹は二酸化炭素を吸収し、収穫した後も炭素を固定する
③竹は苗植えから4-7年で収穫でき、他の木材用の樹木よりはるかに成長が速い

等が挙げられます。

アリーフの取り組みは、竹の持つ特性を活かした土地の再生にとどまらず、収穫される竹と農作物から地元の農家が収入を得られるというように、現地で働く人達の収入向上にも繋がっています。土地の再生・植林活動に経済価値を生み出していることが、アリーフの活動の革新的な点の一つです。

このバンブービレッジ構想は、UN Decade on Ecosystem Restoration(国連生態系回復の10年)で推進するプログラムとして採択され、今後国際機関とパートナーシップを組み、12ヶ国に展開していく予定です。

 

パネルディスカッション「ビジネスが創る、人と社会と自然が共繁栄する未来とは?」

 

 

イベント後半では、アリーフと濱川明日香に加えて、サントリーホールディングス株式会社CSR推進部長 一木典子氏、一般社団法人エシカル協会 代表理事 末吉里花氏をお招きし、パネルディスカッションを行いました。

モデレーターを務めた濱川知宏から、

「リジェネラティブな未来を創るために、ブレイクスルーとなるものがあるとしたら何か?」
「日本で竹を使った土地の再生活動の受け入れられ具合や、感じた連携の可能性は?」
「世界中を飛び回りながら、最前線で活動をしながら地に足をつけていられる秘訣は?」

という質問を交えながら、リジェネラティブな未来を創るために企業や個人の立場でできること、について議論を深めました。

イベント概要

アリーフと一緒に!バンブーヨガ

 

アイスブレーキングとして、アリーフが紹介したのがバンブーヨガ。 ”竹が未来の資材として素晴らしい5つの理由”として

 

  1. 1haあたり50トンのCO2を吸収する
  2. 雨季1シーズンにつき5000リットルの水を吸収
  3. 竹は鉄よりも硬度強度の高い資材になる
  4. 農民に生計手段を与え、収入向上をもたらす
  5. 6-9ヶ月で10メートル以上に成長し、生物多様性を保つ

 

を体を動かしながら説明し、楽しく分かりやすく、竹が有するいくつもの可能性を伝えました。

パネリストのコメント

「今回は約8年ぶりの来日となりましたが、毎回来るたびに、日本の素晴らしい竹の文化と伝統に非常に惹かれて感銘を受けます。長く日本に根づいてる竹に関する職人的な価値観をどのようにインドネシアのバンブービレッジで実践できるかを考えています。 地球を再生させていく「リジェネレーション」を推し進めていくためには、農民でも政策意思決定者でも、すべてのステークホルダーが自然を感じて、自然に癒やされる体験をすることが、社会全体として自然を再生させるという意識を作っていくことにつながると思います」

IMPACT HERO 2021アリーフ・ラビック

「これまでサントリーは、20年間以上に渡って天然水の森の保全活動を通じて、国内工場で汲み上げる地下水量の2倍以上の水を保全して来ました。この活動の背景としてあるのは、トレードオン・ネット/ネイチャーポジティブの考え方だと感じます。水を使う事業を行っている以上、水分野でこのような活動を行うことが事業の持続可能性のために生命線であり、ビジネス戦略であり、文化であると位置づけています。 また、リジェネラティブな未来を作っていくには、長期的には未来を創る人への投資が重要です。来年度バリ島でグローバル研修を行う入社2年目*の約260人の社員たちには、水や廃棄物の問題など課題を肌で感じてもらいたいと思います」

-サントリーホールディングス株式会社CSR推進部長一木典子氏

「リジェネラティブを考えた時に『再生』『回復』がキーワードになると思います。リジェネラティブは、比較的新しい言葉で、エシカルの上位概念とも、考え方のベースにあるものとしても捉えられます。マイナスをゼロにする、そしてゼロからプラスを作り出し、その領域を広げていくことが、リジェネラティブな未来を作っていくことだと感じています。 一人ひとりが普段の消費や生活の中で、循環・サーキュラーの輪の中にどうやったら入っていけるのかを考え実行していくことが求められていると感じます」

-一般社団法人エシカル協会 代表理事 末吉里花氏

「リジェネレーションは、自然の再生だけではなく、包括的に人々の暮らしとか、人のそのウェルビーイングを再生していくっていうことだと思います。 地球と繋がって生きてるから、私たちも土に根を張るということをしないといけないと感じます。私達はどれだけ地球に生かされているのか、健全な土壌・水・空気がなければ生きることすらできない、という当たり前のことを再認識して、人類として初心に帰ることが必要なのではないでしょうか」

-一般社団法人Earth Company 代表理事 濱川明日香


講演が終わった後の交流時間もたくさんの方々が会場に残り、熱気に溢れた会となりました。
また、今回のイベントでは、半数以上の方がアリーフへの支援活動への寄付付きチケットを購入してくださり、9万4000円のご寄付を賜りました。みなさまからのご寄付は、アリーフへの支援活動に大切に使わせていただきます。本当にありがとうございました!