このプログラムには、東京、福岡、山口、島根、長野から9名の小学生が参加してくれました。その様子をご報告します!
【ご報告】子どもだって社会を変えられる!小学生チェンジメーカープログラム開催レポート
このプログラムのゴールは、参加した子どもたちが環境問題に絶望的になることではなく、「自分たちが挑戦することで、地球を救うことができる」という希望をもち、課題解決のたに自ら決めた挑戦を始めること。
気候変動、生物多様性の減少、森林破壊など様々な環境問題の中の1つとして、ごみ問題を知ることから始まりました。
無限にあると信じていた資源が実は有限であり、人間中心に発展すればするほど、多くの犠牲をだしてきてしまった私たち。日本人のように世界中の人が暮らすと地球は2.8個分必要と言われている今、何を変えていくべきなのか本気で考える旅路のスタートです。
家の排水溝は海への入り口。海の汚染はごみだけじゃない
まずは、海が直面する環境問題について学びます。
海を汚しているのは、ごみだけではありません。家庭排水による汚染は、日本のような下水システムが発展している国でもゼロではないのです。
それならば、出来るだけきれいな水を流すようにしたいですよね!
そこで、プログラムでは「洗剤をあまり使わずに、水を出来るだけ汚さずに、食器をきれい洗うにはどうしたらいいのだろう?」を実感してもらうために、みんなで家にあるもので小さな実験をしました。
それは、お皿と新聞紙、水、重曹、油性マジックを使い、お皿に油性マジックで書いた文字を水と重曹と新聞紙できれいにするというものです。
※この実験は、All things in nature の堀さんがOperation Green プロジェクトの勉強会で教えてくださいました!詳しくは、こちらのレポートをご覧ください
実験後のお昼休憩でハヤシライスを食べた子は、さっそくお皿の汚れを新聞紙ナプキンでふきとり、重曹を薄めた液でお皿を洗ったと楽しそうに報告してくれました!
日本のごみの現実を知り、危機感を抱く子どもたち
次に、「日本のごみ」の現状を学んでいきます。
家庭から出るごみの第1位は紙ゴミ、2位は生ごみ、3位はプラスチック。
プラスチックといえばリサイクルをされているイメージが強いですが、実は日本では回収されたプラスチックの70%が焼却されており、リサイクルに回されているのはわずか30%。
さらにリサイクルのうち、60%以上が海外へ輸出(2017年)されています。これには子どもたちも驚きを隠せませんでした。
しかも近年、輸出先だった中国やインドネシアなどからプラスチックごみの受け入れを拒否され、日本は処理し切れないプラスチックごみを抱えることに。
これまで自分たちが出したごみの処理を、他国に任せている日本の現実に愕然としたとき、「出来るだけ普段の暮らしの中から、使い捨てプラスチックを減らしたい」という子どもたちの気持ちが強くなっていったのを感じました。
「私たちはポイ捨てしたりしていないのに、
どうして海にはごみが溢れているの?」
「海ごみはどこから来るのだろう?」という問いに、みんな頭をひねっていました。
学校で「ごみをポイ捨てしてはいけない」と教えられている子どもたちは、素直にそれを守って行動しています。だから、こんなにものたくさんのごみがどうして海にあふれているのか、想像もつかないようでした。
海ごみは海やビーチに直接捨てられたものだけではなく、その多くは陸上からきたものだと言われています。普段私たちが何気なく目にする道路脇に捨てられたごみや、風で飛ばされてきたごみが雨風で川や用水路に流れ、海に流れ着くのです。
何でもないと思うような小さなことが積み重なると、大きな問題になる。普段の暮らしが海ごみ問題に直結していることに気がついた時間でした。
これで「海のごみ」のプログラムは終了です。
次は「町のごみ」について学びます。
2. 「町のごみを学ぶ」セッション
ごみ問題は地球温暖化にもつながっている
小学校中学年にとっては、まだ学校で習っていないテーマですが、地球温暖化もごみ問題と切り離せない深刻な問題です。
そこで、「町のごみ」セッションでは、まずは地球温暖化の基礎とごみ問題とのつながりを学びました。
日本のごみは全体の70%が焼却、20%はリサイクル、10%は埋め立て処理されています。
日本はごみを焼却処理している国として世界トップ。例えば、埼玉県では焼却処理に伴う温室効果ガスの排出量は県内全体で約95万トン(CO2換算・平成20年のデータ)、焼却施設からはその95%に当たる約90万トンが排出されているものと推算しています。
ごみを減らすチャレンジは、地球温暖化の原因である温室効果ガスの削減にもつながるのです。
ペットボトルは、私たちの何倍も長生きする
保存容器として最適なプラスチックは、とても頑丈です。それだけ、自然分解するまでの時間もかかります。
例えばペットボトルが自然分解するまでの時間は、450年。ビニール袋ですら、20年かかると言われています。アルミ缶は200年、ビンについては永久に分解されることはありません。
これにはみんなびっくり。
子どもたちによるプラスチックの自然分解年数の予測は、7ヶ月〜4年。ビンですら5ヶ月〜10年で自然分解されるという予測でした。
コットンやウールのシャツなど植物・動物由来の素材が数ヶ月で自然分解されるのと比較して人工物の分解年数に愕然し、ごみの深刻さを改めて感じる時間でした。
「食べ残さない」から始められるフードロス問題
ごみ問題を考える上で避けられないのは、食べるために作られた食料が、食べられず捨てられる「フードロス問題」です。
廃棄された食品の多くは焼却処分されており、気候変動を引き起こす二酸化炭素排出にもつながります。
フードロスの出所として最も多いのは家庭から。捨てた理由の半数以上は「食べ残し」です。だから、毎日の食事を「食べ残さない」ことが、フードロス問題の解決につながるのです。
同時に、食料の生産地や加工場など流通過程でも、フードロスは起きています。私たちが一番身近にできるアクションは「食べ残さない」ですが、フードロス問題を解決するために必要なことは「食べ残さない」以外にも多くあることを、サプライチチェーン全体で学びました。
子どもでも社会は変えられる!バリ島の姉妹が社会を動かした事例を紹介
ごみ問題は深刻な社会課題ですが、社会を変えることができるのは大人だけではありません。バリ島では中学生が社会全体を変えていきました。プログラムでは、その事例も紹介しました。
インドネシア・バリ島は、海洋ごみ問題が深刻な国の1つですが、この状況を変える為に立ち上がったのは、当時中学生だったバリ島出身の姉妹。彼女たちは、インドネシア大統領に、国としてプラスチックの削減を直談判しました。そして2019年、バリ島ではビニール袋の店頭配布を禁止する施策を制定。彼女たちの起こした行動は、バリ島のごみ問題解決を一歩前進させたのです!
「社会を変えられるのは大人だけではない」ことに、子どもたちは大興奮!
事例紹介2つ目は、バリ島・エシカルホテル「Mana Earthly Paradise」。
ホテルのマーケットは、プラスチックフリーが基本です。想像以上に子どもたちは興味津々で、「もっと知りたくなったことは?」という質問への答えは「色んな国のチャレンジ!」と、国外の取組への関心がとても高まっていました。
「当たり前」を変えていこう!子どもたちのチャレンジが始まった
1日目のプログラムを終えた後、「何か1つ、ごみ問題を解決するためのチャレンジをする」という宿題をだしました。
2日目には、それぞれで取り組んだチャレンジを発表してもらいました。彼らが取り組んだチャレンジは、
・マイクロプラスチックを海に流さないために、食器洗いスポンジはヘチマに変える。
・サランラップを使うのをやめる為に、何度も使える蜜蝋ラップを手作りする。
・賞味期限が切れていても捨てずに、消費期限までに食べる。
・学校のお友達と生ごみコンポストをつくる。
・海にごみを拾いに行く。
・食器洗いや掃除は重曹をつかってエコ洗浄に変える。
・買い物で梱包されていない商品を選ぶ。
など、自分にとっての当たり前を変えるたくさんのチャレンジが出てきました。そして、実際に作った蜜蝋ラップやコンポストの写真を持ち寄って、挑戦の過程を発表しました。
本プログラムで初めて出会った参加者同士が、自分以外の挑戦に感想を伝えあい、継続を決意してプログラムを終えました。
毎日の生活を変える、勇気を後押し!
プログラムを通じて私が感じたことは、子どもたちは日々の暮らしの中で過剰包装やフードロスへの違和感や罪悪感を密かに感じているということ。
しかし、いつのまにか「まぁいっか」「どうしようもないし」と、当たり前のこととして処理してしまっている、実は大切な違和感。
その感情を同世代の子どもたち同士で言葉に出してみたり、自分の考えを共有する時間をもてたことが、とても価値あることだと思いました。
「変わっていいんだ」という安心感が、彼らをスタート地点に立たせるのです。子どもたちの挑戦を後押しする「小学生チェンジメーカープログラム」、引き続き開催していきたいと思います!
ご関心のある方は、ぜひお問い合わせください!
(レポート:プログラムマネージャー 藤本亜子)