【ミャンマー支援レポート #6】ASEAN首脳サミットへ公開書簡で対応を求める

先週4月16日にミャンマーの民主派議員が統一政府の樹立を宣言。これにより、軍政権と民主派議員連盟という2つの政府が並列することになりました。国際社会は新しい民主派政権を「政府」として認めるのか、また日本政府はどのような対応をするのか、ASEAN首脳会議の開催が迫る中、来週以降の外交に注目が集まります。それでは、今週のアップデートをご覧ください。

 

今までのレポートはこちら↓↓↓
【ミャンマー支援レポート#1】ウェイウェイが現地159団体と連携し国連に提出
【ミャンマー支援レポート#2】犠牲となった33歳女性、残された3人の子どもたち
【ミャンマー支援レポート#3】国連・政府関係者も参加!ウェイウェイ主催のウェビナーの実施
【ミャンマー支援レポート #4】広がる支援の輪!平和を祈る210人から応援が!!
【ミャンマー支援レポート #5】国連は動かない。それでも命懸けで声を上げる続ける若者たち

1. 「軍のトップの招待は、クーデターの正当化につながる危険性がある」WPNがASEANへ切実な訴え

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4月24日、インドネシアの首都ジャカルタでASEAN首脳会議が開催されます。ASEANがミャンマー情勢に対して具体的な打開策を打ち出せるか注目が集まる中、ミャンマー国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官が出席の意向を表明しています(4月20日時点)。

ウェイウェイが代表を務めるWomen’s Peace Networkは、ASEANに対して抗議文を発表。不当なやり方で政権を掌握した軍のトップの参加を認めるということは、軍政権を正当化していると認識を国際社会に与えるとともに、ミャンマーの国民の意志に反する行為だして、招待を取り消すように求めました。また、軍の行為はASEANが定める条約に違反するとして、軍の説明責任を追求し、ASEANの地域機構としての役割を果たすように主張しました。

また、ミャンマー国内でも、SNSでハッシュタグ #ASEANrejectSAC (ASEANは軍政権を受け入れないで)がトレンド一位にランクインするなど、ASEAN各国に対する市民の声も大きくなっています。

こうした市民の声や国際社会からの懸念などの一連の流れを受け、タイは首相の参加取り止めを発表。他国も一部は外相の出席などでミャンマー国軍をけん制する姿勢を見せています。

 

参考
・「Myanmar junta leader to join ASEAN summit
・「
ASEAN Member States must take coordinated action to hold the Myanmar military junta accountable」
・「ASEAN首脳級会議 24日開催 ミャンマー情勢打開策示せるか焦点

2. 「殴られた娘の顔を直視できません…」SNSで拡散される拘束された若者たちの姿

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画像引用元:Wai Wai Nu Twitter投稿より

ミャンマー国営テレビで、拘束された若者の変わり果てた姿が放送されました。4月17日にヤンゴンで拘束されたMa Khin Nyein さん。英国での5年間の留学経験を持つMaさんは、「民主主義を望んだ」という理由でつかまり、軍から暴行を受けました。Maさんの母親はインタビューで、Maさんへの想いを綴っています。

「娘とは別々の場所で暮らしていました。4月18日の夜に娘が拘束されたという話を聞きましたが、その晩はすでに門限の時間が過ぎていたので家にいるしかありませんでした。翌朝、拘束されている警察署にいくと、娘が2人の警官に移送される姿を目にし、とっさに大声で娘の名前を叫びました。その時に見えた、振り向きざまの顔はとてもひどく暴行を受けていたことが明らかで…まともに歩くことができない娘の姿を見て、どうしていいのかわからなくなりました。命が無事であることを祈ることしかできません」

このような現状に対して、ウェイウェイが代表を務めるWomen’s Peace Networkは、軍による拘束者への暴行は拷問に該当し、拷問禁止条約などの国際法に明らかに違反していると指摘。即座に拷問を止めるように訴え、国際社会は国際人権法に基づいて軍への説明責任を問うべきだと、追求しました。

また、現地の人権団体によると、4月20日現在3000人を超える人々が拘束されています。日本人ジャーナリストの北角裕樹さんも現在拘束されており、その対象は外国人にも広がっています。

3. コロナ感染でさらに脆弱な環境におかれるロヒンギャ難民の現状

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ウェイウェイは、4月16日に米・ペンシルベニア大学が開催したウェビナー「コロナウイルスがもたらす危機と難民女性の暮らし」に登壇し、ロヒンギャ難民キャンプへの支援を求めました。

ミャンマーとバングラデシュの国境に逃れている約100万人のロヒンギャ難民。ウェイウェイは、パンデミックの影響で難民の女性の生活環境がこれまでよりも一層厳しくなっていると話しました。具体的には、雇用の喪失、プライバシーの確保や社会活動の場の減少、家庭内暴力の増加などの深刻な問題が起こっています。

隣国のバングラデシュやタイは、劣悪な環境の難民キャンプからコロナウイルスが自国に広がることを懸念し、ロヒンギャへのヘイトキャンペーンまで起きています。またバングラデシュでは、4月に入り一日の国内感染者数が5000人を超え、その対応に追われロヒンギャへの支援が進んでいない現状があります。ウェイウェイは、難民キャンプの衛生環境の改善や基本的なインフラ整備の支援の必要性を強く訴えました。

また、3月23日に起きた難民キャンプを襲った大火事により、状況はより悪化しています。UNHCRによれば、大火事で少なくとも100人が亡くなり、45,000人が家を失いました。

今回のクーデターにより、ロヒンギャの虐殺を指示・実行した軍が政権を握ったことで、ロヒンギャ難民のミャンマーへの帰還はより一層実現の見通しが難しくなりました。長期間脆弱な環境での生活を強いられているロヒンギャの現状に目を向け、必要な支援を迅速に届けることが求められています。

 

参考
Human rights activist discusses pandemic’s impact on refugee women at Perry World House event

編集後記(あとがき)

 

ミャンマー国軍総司令官のASEAN首脳会議への参加表明をめぐり、ASEAN各国や日本、および国際社会の対応に注目が集まります。国連もASEANの連携に期待するという表明を出しましたが、地域機関であるASEANがどこまで行動を起こすことができるか、期待が高まっています。また、国内でもテレビでミャンマー特番の放送やニュースで人権NGOによる記者会見が取り上げられるなど、ミャンマー情勢への認識が高まっていると感じています。

短期的な解決が見込めない問題ではありますが、世界がミャンマーに関心を持ち続けること、そして現地からの声を無視しないことが求められているのではないでしょうか。

IMPACT HERO支援担当・島田 颯